興収で読む北米映画トレンド
『アバター:F&A』北米V2、10億ドルへ爆進中 ティモシー・シャラメ&A24、奇策で健闘

『アバター』シリーズの興行収入は予測できない――『アバター』(2009年)と『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』(2022年)に続き、第3作『アバター:ファイヤー・アンド・アッシュ』が全世界で大ヒット中だ。
12月26日~28日の北米映画週末ランキングは、『アバター:ファイヤー・アンド・アッシュ』が2週連続でNo.1を獲得。週末3日間で6400万ドル、クリスマス(25日木曜日)を含む4日間では8800万ドルを記録し、週末興収では前週比マイナス28.2%という異例のホールドとなった。
ハリウッドの大作フランチャイズの場合、とりわけ話題の大きい作品や続編映画であるほど第1週に観客が集中するため、2週目の下落率は大きくなる傾向にある。しかし、そんななかで本作は前作よりも堅調な推移となった。口コミやリピートの効果も含め、ホリデーシーズンに屈指の注目を集めている証左だ。

残念ながら日本市場ではそれほど圧倒的な存在感とは言いがたい『アバター:ファイヤー・アンド・アッシュ』だが、中国やフランス、ドイツでの大ヒットも手伝い、まもなく世界興収は『劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来』や『ジュラシック・ワールド/復活の大地』を上回る。
北米興行収入は2億1769万ドル、全世界興行収入は7億6039万ドルで、年明け最初の週末には10億ドルの大台を突破する見込みだ。2025年公開作品としては、実写版『リロ&スティッチ』と『ズートピア2』に続いて3作目、すなわちディズニー3度目の勝利となる。
初動成績ではなく、比較的長期の興行で収入をふくらませるのは『アバター』のお約束だが、シリーズ第3作でもこの流れがあまり崩れていないのがシリーズの不思議なところ。ただし製作費は4億ドルと高額なため、過去2作のように世界興収20億ドル超えを実現できるかが次のポイントと言えそうだ。
今週の第2位を争ったのは、ディズニー映画『ズートピア2』と、ティモシー・シャラメ主演のA24最新作『マーティ・シュプリーム 世界をつかめ』だった。週末3日間では『ズートピア2』の勝利、しかし4日間の成績では『マーティ・シュプリーム』が勝利という非常に興味深い成績となっている。
『ズートピア2』は週末3日間で2000万ドル、4日間で2520万ドルを記録。これに対し、『マーティ・シュプリーム』は3日間で1559万ドル、4日間ではなんと2710万ドルとなった。3日間の成績でも、『シビル・ウォー アメリカ最後の日』(2024年)に次いでA24史上No.2の週末興収となった。

『マーティ・シュプリーム』は卓球の世界選手権を目指す主人公マーティ・マウザーが、手段を選ばずに奮闘する卓球映画×犯罪映画。監督は『アンカット・ダイヤモンド』(2019年)や『グッド・タイム』(2017年)を手がけたサフディ兄弟の兄、ジョシュ・サフディが手がけ、前週の限定公開から記録的なヒットとなっていた。
シャラメはプロモーションに全身全霊を注いでおり、A24チームとの宣伝ミーティング(という設定の映像)に出演してアイデアを提案。ハリウッドの上空に『マーティ・シュプリーム』のタイトルを冠したオレンジ色の飛行船を飛ばしたり、ラスベガスの球体型シアター・スフィアを巨大なピンポン玉に見立て、シャラメが史上初めてその頂点に立ったりと奇抜な作戦に出ている。
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同じくA24の製作『The Smashing Machine(原題)』が、ドウェイン・ジョンソン主演にもかかわらず苦戦したように、最近の中規模映画は、たとえスター主演でもヒットしないケースがしばしばある。そんななかで本作は、映画への評価・支持とプロモーション戦略が見事に噛み合った一例だろう。
Rotten Tomatoesでは批評家スコア95%、観客スコア83%。映画館の出口調査に基づくCinemaScoreでは「B+」評価となった。作家性が強く、必ずしも万人受けしない作風の映画としてはかなりの高水準だ。観客は35歳以下が65%で、ホリデーシーズンを通じた口コミ効果も期待されている。日本公開は2026年3月13日。






















