平野眞監督が語る『ドビュッシーが弾けるまで』制作秘話 國村隼らと挑んだピアノ演出

平野眞監督が語る『ドビュッシー』制作秘話

 國村隼が主演を務め、INIの尾崎匠海が共演するスペシャルドラマ『ドビュッシーが弾けるまで』が、12月24日22時よりフジテレビ系で放送される。最愛の妻を失った男と、ピアニストの夢を諦めた青年が、ピアノとウイスキーをきっかけに互いの人生を奏で直していく物語。

 演出を担うのは、2025年の話題作『波うららかに、めおと日和』(フジテレビ系)などを手がけた平野眞監督。新人のプロデューサーと脚本家との協働、ベテラン俳優たちとの現場、ピアノシーンに込めた思いまで、クリスマスイブに届ける特別なドラマについて、たっぷりと語ってもらった。

新人脚本家・石田真裕子の才能と「当て書き」の強さ

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――企画を最初に聞いたとき、どんな印象を受けましたか?

平野眞(以下、平野):クリスマスなのに、おじさんがいっぱい出ていいのかな、と思いました(笑)。プロデューサーの鈴木(康平)も「クリスマス感は出したい」と言ってたので、「まぁそうだな」と思いつつ、「でも、おじさんだしなぁ」と(笑)。実際、プロットを見てもまったくクリスマス感がなかったので、じゃあ頑張って作っていこう、というところですね。第一印象はそんな感じで、「若い人を入れた方がいいよ」とずっと言っていました。しかもプロデューサーと脚本家がどちらも若い新人なので、「どうしてこれを企画したんだろう」と思ったりもしましたね(笑)。

――クリスマスイブに放送する作品として、挑戦的ではありますよね。

平野:クリスマスだし、ツリーの前で「君が好きだ。お前のことが忘れられない!」みたいなことをやりたいじゃないですか。でも、そんなことはまったくなかったですね(笑)。内容的な話をすると、やっぱり年齢の高い役者さんは奥行きがあるので、ほんのちょっとの指示で変わるし、お芝居をお願いするのが面白いんですよ。國村(隼)さんとご一緒するのは初めてだったんですが、僕はやる前に何でも言っちゃう人なので、「すみません、気を悪くしないで」とお願いしつつ、ズケズケと思っていることを言いました。

――実際、國村さんの反応はいかがでしたか?

平野:「うん、わかった。やってみる」と必ず返してくれるんです。「今の感じどうですか?」「僕はこっちのほうがいいと思いますよ」と、2人でしょっちゅう話し合いながらできたので、すごく有意義な時間でしたね。さらには片平なぎささんも、大ベテランの俳優さん。そういう俳優たちと相対するのは、やっぱり面白いですよね。

――脚本は、第36回フジテレビヤングシナリオ大賞を受賞した新人の石田真裕子さんが担当されています。印象はいかがでしたか?

平野:思い描いていることがしっかりしているので、逆に「ト書きを書きすぎると演出家の入る範疇がなくなるから、もう少しざっくりと書いてもいいよ」と最初に話をしました。キャスティングが決まってからは、その人を想像して書いてほしいとお願いして。やっぱり当て書きって強いじゃないですか。彼女のいいセリフは残したいなと思っていたので、「ちゃんと彼のことを想像して書いてごらん」と伝えました。

――脚本を作り始めて、途中でキャスティングが決まったと。

平野:今回はそうでしたね。でも、本を作りながら「これは誰だろう」「こっちは誰だろう」と、プロデューサーと僕と脚本家の3人で、いつもリモートでやり取りしていました。石田さんはお子さんがいるので、ちょうどいい時間に集まって何度も打ち合わせをして。物語に対する思いもそれぞれ少しずつ違うので、そこを話し合うのがすごく面白かったですね。自分としては、台本ができた時点でもう“勝ち”なので、あとはそれを表現するだけ。とはいえ、今回は台本をみんなで作ったので、やっぱり思い入れは強いです。

――石田さんの“ここが脚本家として優れている”と感じたところはどこでしょうか。

平野:お願いしたことを具現化するときに、すごく力を発揮されるんだなと思いました。思う存分自由にやるよりも、「これはお金がかかるから、ここまでしかできません。だからその中で考えて」と伝えたときに、ものすごい力を発揮する。それはすごいなと思いましたね。お願いした倍くらいのものが返って来るので、「ああ、いいセリフになったな」と思うこともたくさんありました。やっぱり賞を受賞しているだけあるんですよ。ヤンシナを取るって、本当にすごいことですから。

――ベテランの脚本家とご一緒するのとは、また違った面白さもありましたか?

平野:僕は、台本のセリフをあまり変えたくないと思っているんです。言い方は変ですけど、たとえ自分が「なんでこうなんだろう」と理解できないとしても、これをやらせようとしている脚本家の意図は汲みたい。なので僕は、「このセリフに変えましょう」ということが一切ないんです。これって実は、最近の監督だとちょっと珍しいと思いますね。もちろん役者自身の言い回しに変わることもあるけれど、基本的にはもとのセリフのまま、一度は撮るようにしています。しかもその後、編集時やオンエア時に気づくことが多いんですよ、「ああ、こういうことだったんだ」って。だからこそ、脚本家のセリフは大事にしたいし、それはベテランの人も若い人もみんな一緒ですね。

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