平野眞監督が語る『ドビュッシーが弾けるまで』制作秘話 國村隼らと挑んだピアノ演出

平野眞監督が語る『ドビュッシー』制作秘話

平野眞監督が感じた、國村隼とINI 尾崎匠海の化学反応

――撮影を終えて、手応えやご感想はいかがですか?

平野:毎回、手応えはそんなにないんです。それでも今回は、「ここを大事にしたいな」と思うところで、“ちゃんとお芝居を撮れた”という実感はありますね。今回、國村さんが泣くシーンがあるんですが、「一回でやりたいので、動きまで決めさせてください」と提案させてもらいました。「集中して、最後のところでポロッと流すというのが僕のイメージです」と伝えたら、「わかった」と。実際、その言葉通りに一発でいけたし、お芝居もすごく良かったですね。國村さんも「今日はよく寝れそうだ」と言ってました(笑)。

――國村さんは手応えがあったわけですね(笑)。今回は、ピアノがキーポイントになる物語です。

平野:地上波のテレビドラマって、ゴロゴロと寝転がりながら観るものですよね。その中でピアノの音に引きつけられて、テレビにスッと入っていってもらえたらうれしいなと思います。配信作品はお金を払って観たりもするけれど、テレビはずっと流れているものだからこそ、引きつけるのが難しいんです。この取材の前にも音楽についての打ち合わせがあったので、ピアノ曲ばかりを「これでもか」と詰め込みました(笑)。24日の夜、ピアノの音が何かの引っかかりになってくれたらいいなと思いますね。

【メイキング】主演・國村隼 ポスター撮影風景&コメント|12月24日放送 スペシャルドラマ『ドビュッシーが弾けるまで』【フジテレビ】

――劇中で流れる音楽にも注目ですね。

平野:今回は國村さんと片平さん、INIの尾崎くんが、ものすごくピアノを練習してくれたんです。僕はカメラを動かしながら演出するのが嫌いで、言ってしまえばレールやクレーンは大嫌いなんです(笑)。だけど今回は、苦渋の決断でピアノを弾いている手元から顔までを一連で撮ることにしました。僕の中では本当にありえないことなんですよ。気持ち悪くてしょうがない。でも、そういうこだわりを捨てて、「この人が本当に弾いているぞ」というテレビ的な見せ方をしました。3人がすごく頑張って練習してくれたので、これは撮らないと失礼だなと。きっと、本人たちにも満足してもらえたかなと思います(笑)。

――尾崎匠海さんの印象はいかがでしたか?

平野:尾崎くんのお芝居はいろいろと本人と話し合って、「こうしてほしい」と細かく伝えるようにしました。一度、「國村さんとお芝居すると、グーッと持っていかれる感覚があるでしょう?」と聞いたら、「それがあるんです」と。それは、あなたに「『こういうふうに芝居をしたほうがいいよ』と信号を送っているからなんだ」と伝えてから、彼は相手のことをすごく考えてお芝居をするようになりました。それが一番よかったなと思いますね。それに、カメラが来るとやっぱりカッコよく映るんですよ。さすがはアイドルで、大したもんだなと思います。

【メイキング】尾崎匠海 ポスター撮影風景&コメント|12月24日放送 スペシャルドラマ『ドビュッシーが弾けるまで』【フジテレビ】

――具体的に、「この瞬間、役者として輝いたな」と感じたシーンはありますか?

平野:國村さんに対して、ワーッと文句を言うところがあるんです。自分の思いを伝えるにも、相手に響かせなきゃいけないし、自分の置かれている立場もよく考えなければいけない。そこを「一言一言、ちゃんと考えてきてね」と話をして、実際に演じてもらったら、それはもう見事でしたね。よく考えてきてくれたなって。23時くらいのシーンなので、ぜひ楽しみにしてほしいです。尾崎くんは当然ながら現場に脚本は持ち込まないし、セリフも全部入っている。彼はピアノもそうだけど、やると決めたことはちゃんとやらないとダメみたいです。柔軟性があるし、何事にも前向きなところが素晴らしかったと思います。

――本作を演出する上で大切にしたこと、印象的だったことも教えてください。

平野:今回は80シーンくらいあるので、40シーンくらいまではとにかく面白いことを入れていこうと思っていました。数字で考えるのも変な話だけど、笑えるところは笑わせたいと思うし、僕は真面目なセリフでおかしなことをするのが好きなので、それをいくつかやりましたね。演出としては、やっぱり國村さんが泣くシーンは印象的でした。大の大人が泣くってよっぽどのことだと思うので、最初からすごく集中していましたし、そのシーンが来るのがすごく楽しみでした。僕は、普段からカメラの横にいて生で役者さんの芝居を見ちゃう方なんですが、今回は國村隼さんのお芝居を初めて見られたので、その楽しみが大きかったです。やっぱり、おじさんの芝居はいいんですよ。

――初めはクリスマスっぽくないとのお話もありましたが、クリスマスイブにぴったりの作品になりましたでしょうか。

平野:うーん、どうだろう(笑)。でも、本当にお酒を飲みながらのんびり観てもらえればいいなと思います。人が殺されるわけでもないし、極端に言えば、おじさんがピアノが弾けるか弾けないかの話なので。セリフにもあるけれど、「何かを始めるのに、遅すぎることなんてない」。國村さんも70歳で初めてピアノを練習されたとおっしゃっていましたけど、それだって一つのチャレンジだし、観ている人に「じゃあ俺も何かやってみようかな」くらいに思ってもらえればいいなと思いますね。クリスマスとは少し違っても、「年明けから頑張ろう」と思えるようなドラマになってくれたらうれしいです。

■放送情報
スペシャルドラマ『ドビュッシーが弾けるまで』
フジテレビ系にて、12月24日(水)22:00~23:34放送
出演:國村隼、尾崎匠海(INI)、片平なぎさ、加藤史帆、西堀亮(マシンガンズ)、春海四方他ほか
脚本:石田真裕子
演出:平野眞
プロデュース:鈴木康平
制作プロデュース:遠藤光貴
制作協力:スイッチ
制作著作:フジテレビ
©︎フジテレビ
公式サイト:https://www.fujitv.co.jp/debussy/
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