『ザ・ロイヤルファミリー』が成功した3つの要因 一貫して問われた“継承”とは何か

 『ザ・ロイヤルファミリー』(TBS系)が12月14日に最終回を迎えた。20年にわたる馬主一家の継承を軸にした家族のドラマを、競走馬の血統と並べて描く本作は、競馬ファンと一般視聴者を巻き込んで、かつてない広がりを見せた。日曜21時枠の地上波ドラマ大本命の重責を見事に果たしたといえる。

 『ザ・ロイヤルファミリー』の成功はいくつかの要因が考えられる。ここでは、競馬を題材にしたこと、継承というテーマ、ドラマで描かれた2025年の有馬記念について考えてみたい。

 競馬はわりにあわないギャンブルである。運に左右されるのが競馬で、事前に精密に分析しても、本番で番狂わせが起きる。馬のコンディションや馬場の状態、天候によってレースの決着は変わる。他方で血統と調教がものをいい、騎手の手綱さばきによって馬のポテンシャルが引き出されるスポーツの側面も強い。

 偶然性に支配される競馬をドラマで扱うことには一長一短がある。番狂わせを起こし、スリリングな展開を可能にする一方で、本命が勝っても破綻がなく予定調和と言われてしまう。あらゆる手を尽くし、一生懸命努力しても報われるとは限らない。歓喜の裏に絶望があって、人生の機微に通じ、学びと教訓がある。

 競走馬を題材にした映像作品は過去にもあったが、競馬をドラマの中心にする際、誰の視点で構成するかによって描かれ方は大きく変わる。『ザ・ロイヤルファミリー』では、馬主の山王耕造(佐藤浩市)と息子の中条耕一(目黒蓮)、専任秘書の栗須栄治(妻夫木聡)を軸に、競走馬を育成するファームと調教師、ジョッキーが一つの“ファミリー”を形成し、有馬記念制覇の夢へと進んでいく。

 そこに重ねられるのが競走馬の血統だ。サラブレッドは交配によって速くて強い馬を生み出す。優秀な種馬の需要は多く、最近も、一頭の親から生まれたきょうだい馬や子孫が重賞レースで次々と優勝するなど、競馬における血統の有効性は認められている。人と馬それぞれで、世代を超えて受け継がれる安定した縦軸があり、レースの偶然性という横軸と交差することで、ドラマの原動力になっているのが『ザ・ロイヤルファミリー』である。

 今作では一貫して「継承」とは何かが問われていた。直接的には、競走馬の血統が世代を超えて受け継がれることで、登場人物でいえば、耕造から耕一へバトンが託されることだ。遺伝子レベルの継承はアナロジーでもある。本作の継承は、もっと広がりのあるコンセプトを示していた。

 ドラマ終盤で、耕一が競走馬のロイヤルファミリーと馬主資格を耕造から相続する場面があった。親子の相続はもっともわかりやすい継承だが、それ以上に大事なのは、「日高の馬で有馬を制する」という夢を受け継いだことだ。それは一方的に押しつけられたわけではない。最終話で、耕一と椎名展之(中川大志)の印象的なシーンがあった。

 「継承の奴隷になるな」と言い、継承は負債の繰越で自由になれと諭す展之に、レース当日、耕一はこう返す。

「継承は選び取るものなんだよ。俺は望んで夢を受け取って、自分のものにしたんだよ」

 そこにあるのは自ら主体的に夢を実現する意志である。血の縛りが夢に変わったのは、人と人の絆があったからだ。生まれたばかりの競走馬を譲るため、必死に生きる耕造の思いを耕一は受け取った。調教師の広中(安藤政信)やジョッキーの翔平(市原匠悟)、山王家の人々。耕一にとって、ロイヤルファミリーを勝たせることは、彼らとともに生きることだった。

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