『ウィッシュ』アーシャは歴代ディズニーヒロインと何が違う? “実は悪役説”にひそむ誤解

『ウィッシュ』は歴代ヒロインと何が違う?

 『ウィッシュ』は、ディズニーヒロインの新しいあり方を提示したことで有名。とはいえ、間違いなく歴代ヒロインの系譜に位置づけられるキャラクターでもある。

 その歴史を簡単に振り返っておくと、最初期のディズニープリンセスは白雪姫やシンデレラのように、受け身な姿勢で王子様に見初められる対象だった。その後『リトル・マーメイド』のアリエルあたりから能動的なヒロインが登場するようになるが、ラブロマンスの要素が強く、魅力的な男性とセットで描かれることが多かった。

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 2018年の『シュガー・ラッシュ:オンライン』には、こうした歴史をユーモラスに風刺した場面があったことが印象的だ。主人公・ヴァネロペが歴代ディズニープリンセスたちのいる部屋に飛び込んでしまい、「私もプリンセスなんだよ」と主張するのだが、そこで「男の人がいないと何にもできない女の子だとみんなに思われてる?」という質問を投げかけられる。そしてヴァネロペが「そう! それってムカつくよね」と答えると、「本物のプリンセス!」と満場一致で認められるのだった。

神田沙也加、津田英佑 - とびら開けて(From『アナと雪の女王』)

 その一方、時代の変化に応じてヒロイン像も大きく変わっていくことに。2013年製作の『アナと雪の女王』ではハンサムな王子様の正体が実はヴィランだったという展開が描かれた上、物語の中心が男女の恋ではなくアナとエルサの姉妹愛に置かれていた。

 さらに2016年製作の『モアナと伝説の海』は、ラブロマンスが一切出てこないという画期的な物語。ヒロインのモアナは自らの意志で生まれ故郷から離れ、大冒険を繰り広げる。「海に選ばれた少女」ではあるものの、エルサほど特殊な力を持っていないということも、大きな特徴だろう。

 そして『ウィッシュ』のアーシャは、恋愛をしないという点でも、能動的に冒険を繰り広げるという点でも、特殊な力を持っていないという点でも、こうした流れを受け継いでいる。

 その上でアーシャが新しかったのは、自分の力でヴィランを倒したわけではない点だろう。ロサスの人々に向かって語りかけ、マグニフィコ王に立ち向かうきっかけを与えたのが重要なところで、いわば“みんなと一緒に戦う”ヒロイン像を示しているように見える。さらにいえば、それは観る者に夢と希望を与えるディズニー作品を体現したようなあり方とも言えるのではないだろうか。

 『ウィッシュ』は野心的な作品ではあるが、その時代に生きる人を勇気づける物語という意味では、どこまでもまっとうな“ディズニーらしさ”がある。今回の放送であらためてアーシャの活躍に注目してみてほしい。

■放送情報
『ウィッシュ』
日本テレビ系にて、12月12日(金)21:00〜22:54放送
※初放送・本編ノーカット
声の出演:生田絵梨花(アリアナ・デボーズ)、福山雅治(クリス・パイン)、山寺宏一(アラン・テュディック)、檀れい(アンジェリーク・カブラル)
監督:クリス・バック、ファウン・ヴィーラスンソーン
原案:クリス・バック、ファウン・ヴィーラスンソーン、ジェニファー・リー
脚本:ジェニファー・リー,、アリソン・ムーア
製作:ピーター・デル・ヴェッコ、フアン・パブロ・レイジェス
製作総指揮:ジェニファー・リー
楽曲:ジュリア・マイケルズ、ベンジャミン・ライス
音楽:デイヴ・メッツガー
©2025 Disney

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