『WIND BREAKER』のアクションは原作に忠実? 『東リベ』『ハイロー』との違いを考察

さらに同作最大の魅力は、俳優たちの存在感と演技力にある。まず主人公・桜遥を演じた水上恒司といえば映画『あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。』などの代表作をもつ人気俳優だが、今回は繊細な演技とダイナミックな身体さばきの両方を見せつけてくれた。
水上は2023年の映画『OUT』でも暴走族の副総長・安倍要役として喧嘩シーンを演じていたが、その頃よりもさらに殺陣が洗練されている印象で、作品全体の緊張感を支えている。

ほかのキャストに関しては、アクションだけでなく、総合的な演技の上手さが光っていた。蘇枋隼飛役の綱啓永、兎耳山丁子役の山下幸輝など、マンガ的なセリフと所作が多いキャラクターを上手く実写の世界観に馴染ませており、実写化作品ならではの違和感を最小限に抑えている。
なかでも防風鈴のトップを務める梅宮一役の上杉柊平は、格別の存在感。梅宮は野菜作りを趣味としており、他人を力で制するのではなく愛情で包み込むような不良らしからぬ人物なのだが、上杉の卓越した演技がそこに説得力を与えていた。

その一方でMVP級の活躍を見せていたのは、濱尾ノリタカ。獅子頭連の副頭取を務める十亀条役で、下駄を履きながら立ち回るシーンもあるのだが、アクション経験の少なさを一切感じさせない身のこなしを披露していた。
とはいえ、その本領はアクションシーン以外の部分にあり、とくに表情の変化や目の動きによる感情表現が実に見事だった。そもそも十亀は口数が少なく、感情が読めないキャラクターだが、獅子頭連・頭取の丁子とあいだには複雑な関係性があるという設定。濱尾は愛情や葛藤、後悔などが入り混じる十亀の内面を丁寧に表現しており、とりわけ作中終盤で桜とのバトル中に見せる表情は一見の価値がある。
不良アクション映画でありながら、繊細な演技を楽しめる映画『WIND BREAKER/ウィンドブレイカー』。実力派ぞろいのキャストがどんな世界観を作り上げているのか、気になる人は鑑賞してみてほしい。
■公開情報
『WIND BREAKER/ウィンドブレイカー』
全国公開中
出演:水上恒司、木戸大聖、八木莉可子、綱啓永、JUNON(BE:FIRST)、中沢元紀、曽田陵介、萩原護、髙橋里恩、山下幸輝、濱尾ノリタカ、上杉柊平
原作:にいさとる『WIND BREAKER』(講談社「マガジンポケット」連載)
監督:萩原健太郎
脚本:政池洋佑
プロデューサー:加茂義隆
音楽:Yaffle、桜木力丸
主題歌:BE:FIRST「Stay Strong」(B-ME)
配給:ワーナー・ブラザース映画
©にいさとる/講談社 ©2025「WIND BREAKER」製作委員会
公式サイト:wb-movie.jp
公式X(旧Twitter):@winbre_movie





















