人気キャラの共通点は“キューアグ”? 『ちいかわ』などにみる“不憫でかわいい”心理

 サンリオが初のオリジナルキャラクターを生んだのは1973年のこと。それから50年以上が経った今、かわいらしい見た目の“ファンシーキャラクター”は根強い人気を獲得するに至った。

 とはいえそのなかでもさまざまな流行り廃りがあるようで、最近では人間に「キュートアグレッション」の感情を引き起こさせるようなキャラクターの人気が爆発している。いくつか具体例を挙げながら、現代のキャラクターコンテンツを俯瞰してみよう。

 そもそもキュートアグレッションとは何かというと、小さな動物やぬいぐるみなどのかわいいものを見たときに、ちょっとした攻撃的な衝動が湧き上がってしまう人間の心理現象を指す。若者のあいだでは「キューアグ」という略称でも浸透しているようだ。

【公式】『ちいかわ』第1話「かためのプリン/ホットケーキ」

 その代表的なコンテンツとしては、ナガノが原作を手掛ける『ちいかわ』が挙げられるだろう。主人公のちいかわをはじめとした“小さくてかわいいキャラ”のほのぼのとした日常を描く作品……と見せかけて、彼らの身にさまざまな危険が襲いかかるというダークな作風となっている。

 作中に登場する「敵」の種類は色々。行動の自由を奪って食べようとしてきたり、おかしなセリフを吐きながら攻撃してきたりと、理解できない生態をしており、その見た目も奇妙なものばかりだ。超常的な力によって悪夢のような目に遭わされることもあり、ちいかわたちの不憫な姿や必死に生きようともがく姿を見ていると、不思議な感情が湧き上がってくる。

『ちいかわ』映画化に際してナガノのコメント&イラスト

 また2026年夏の公開が発表された『映画ちいかわ 人魚の島のひみつ』では、同作のなかでも屈指の恐ろしさを誇る「セイレーン編」が題材となる(※)。これは強大な力をもつセイレーンとの戦いを描いたエピソードで、不穏な展開が多いことからある種のホラーとして受け取る人も。SNS上では、劇場版が「PG指定になるのでは?」という声すら上がっているほどだ。

 「セイレーン編」にかぎらず、『ちいかわ』は登場人物たちが物理的にダメージを負うところだけでなく、精神的に追い込まれる様子を丹念に描いているのが特徴。仲間たちが次々いなくなって1人で頑張らなければいけなくなったり、草むしり検定の試験に1人だけが何度も落ちてプレッシャーを感じたりと、あの手この手で窮地に立たされるのだ。その様子は間違いなくかわいそうではあるが、なぜか「もっと見ていたい」という感情を喚起されてしまうところがある。

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