漫画『ひらやすみ』を実写化する上で大切にしたこと 脚本家・米内山陽子が込めた思い
NHK夜ドラ『ひらやすみ』の脚本を担当する米内山陽子のコメントが公開された。
真造圭伍の同名漫画を原作とした本作は、東京・阿佐ヶ谷の一軒家を舞台に、元俳優でいまは定職も不安もない自由人・生田ヒロト(岡山天音)と、上京してきた従妹・小林なつみ(森七菜)を中心に、“肩の力が抜けるような日々”を描くヒューマンドラマ。
『パリピ孔明』(フジテレビ系)や『ウマ娘 プリティーダービー』などのシリーズ構成・脚本で知られる米内山。ドラマ脚本のオファーを受けた際の心境について、「天にも昇る気持ちでした」と明かし、自身も阿佐ヶ谷に長く住んでいた経験から、原作に出会った際に「忘れていた良い思い出達がぶわっと甦ってきて、こっそりしみじみ泣きました」と振り返った。
原作を脚本化するにあたっては、原作者の真造圭伍から「漫画っぽくなりすぎないようにしてください」という要望があったという。米内山は「絵のキャラクターが話している説得力と、生身の人間が話している説得力は、全く種類の違うもの」と実感し、悲鳴や笑い方、語尾などを検証しながら進めたことを明かした。また、ナレーションやモノローグを極力減らし、「監督が切り取る画面と俳優さんの演技を通して、感じていただきたい」という意図で構成したと語っている。
今後の放送については、「真造先生のリクエストでもあった大切なエピソード、『白いアジサイ』も出てきます」と予告。「どうか最後まで、一緒に散歩するようにご覧いただけたら嬉しいです」とメッセージを寄せた。
米内山陽子(脚本)コメント
ドラマ化の脚本を依頼された時の気持ち
ドラマ脚本のお話をいただいたときは天にも昇る気持ちでした。
東京で一番長く住んだのが阿佐ヶ谷です。
狭くて湿気ていて日当たりの悪いアパートで、百円ショップで買ったなめ茸の炊き込みご飯だけで空腹をしのいだ時期もありました。
時間と野望があってお金だけなかった時代。
戻りたくない、振り返るのもつらい。そう思ったまま年を重ねて―――
2022年。「ひらやすみ」に出会いました。
ページをめくる度に、つらく苦しいと思っていた時代の、忘れていた良い思い出達がぶわっと甦ってきて、こっそりしみじみ泣きました。
小さな炊飯器を大事に使っていたこと。百円ショップをうまく使って快適に暮らそうとしていたこと。家から出てきた千円札に大喜びしていたこと。
なんだ、ちゃんと楽しく生きてたじゃん。居場所があったじゃん。
だから今も生きてるじゃん。
そんな生きていくことへの肯定に溢れた「ひらやすみ」が、ずっとずっと大好きでした。
原作を脚本にする際気をつけたこと
真造先生と初めてご挨拶したとき、「ドラマなので、漫画っぽくなりすぎないようにしてください」というご意見をいただきました。
「ひらやすみ」の原作は数ある漫画作品の中でも特に生っぽい生活の手触りがある作品で、行動もせりふも自然です。だからそこまで心配せずとも……と、正直思っていました。
しかしすぐに実感しました。
絵のキャラクターが話している説得力と、生身の人間が話している説得力は、全く種類の違うものです。
これはどちらが良い悪いではなく、本当に使っている筋肉が違うようなものです。
どうやってもっと生身に落とし込んでいくか、という勝負が始まりました。
悲鳴の上げ方。笑い方。泣き方。語尾。
原作のせりふの空気感は絶対に入れたい。その上で、生身の説得力を持たせること。
やっていることは「あ!」を「あ……」にする、といった細かい事ではあるのですが、一行一行、検証しながら進めました。
視聴者へのメッセージ
放送も残すところあとわずか。
ドラマが最終回を迎えても、原作のヒロト達の生活は続きます。
願わくばその先もドラマに――という私の野望は消えませんが、こればかりはどうなるかわかりません。(でも願望は明文化すると良いらしいです。私調べ。)
今後の回では真造先生のリクエストでもあった大切なエピソード、「白いアジサイ」も出てきます。
どうか最後まで、一緒に散歩するようにご覧いただけたら嬉しいです。
■放送情報
夜ドラ『ひらやすみ』
NHK総合にて、毎週月曜から木曜22:45~23:00放送
NHK ONE(新NHKプラス)で同時・見逃し配信中
出演:岡山天音、森七菜、吉村界人、光嶌なづな、蓮佛美沙子、駿河太郎、吉岡里帆、根岸季衣 ほか
ナレーション:小林聡美
原作:真造圭伍
脚本:米内山陽子
音楽:富貴晴美
音楽プロデューサー:福島節
演出:松本佳奈、川和田恵真、高土浩二
制作統括:坂部康二、熊野律時
プロデューサー:大塚安希