北川景子、“汚れ芝居”で到達した新境地 『ばけばけ』『ナイトフラワー』で極まる表現力
いまの北川景子の姿を見ていると、否が応でも心をかき乱される。かつての彼女が持っていた品格や華々しさ、明るさや強さが揺らいでいる。いや、そのすべてが希薄になっている――。
これはもちろん、放送中の朝ドラ『ばけばけ』(NHK総合)での北川のことだ。彼女が演じる雨清水タエは、ドラマのスタート時といまとで、非常に大きく変わった。ここではそんな彼女の存在にフォーカスしてみたい。
本作は、小泉八雲とその妻のセツをモデルにした物語を描いていくもの。『雪女』や『耳なし芳一』などの誰もが知る怪奇譚がどのようにして生まれ、令和の時代にまで広く語り継がれることになったのか。私たちはこの作品をとおして知っていくことになる。第7週「オトキサン、ジョチュウ、OK?」では、ヒロイン・松野トキ(髙石あかり)がヘブン(トミー・バストウ)の女中に。いま大きな展開を迎えているところである。
北川が演じるタエは、物語の舞台である松江でも随一の名家に生まれた女性だ。少し前までは、誰もが羨むような人物だった。私たち視聴者の中にも、トキの視点を介して憧れていた方がいるのではないだろうか。彼女はいつだって気高く、それでいて嫌味がない。そんな高潔な人物を、大河ドラマ『西郷どん』(2018年/NHK総合)で天璋院篤姫を、『どうする家康』(2023年/NHK総合)では織田信長の妹・お市を演じた北川が立ち上げてきた。