興収で読む北米映画トレンド
ハロウィン北米映画市場、31年間でワーストの低調 ヒット作不足&ワールドシリーズ激突で
アメリカの映画館にとって、今年のハロウィンはとても厳しい週末だった。10月31日~11月2日の北米映画市場の累計興行収入はわずか4900万ドルで、今年に入ってから最悪の成績。ハロウィンの週末としては、コロナ禍まっただなかの2020年を除き、過去31年間で最低の数字となった。
この結果には複数の要因があるとみられている。昨年の『ヴェノム:ザ・ラストダンス』(2024年)のように、ハロウィンの市場を引っ張る話題作・ヒット作をスタジオ各社が用意していなかったこと。ハロウィン当日が金曜日で、映画館が行動の選択肢に入りづらかったこと。翌日の土曜日にはMLBワールドシリーズの最終戦があり、これまた映画館への客足が遠のいたことだ。
週末ランキングの第1位は恋愛映画『Regretting You(原題)』。前週の初登場は第2位だったが、ハロウィン市場の混乱ゆえに思わぬ首位獲得となりそうだ。週末3日間の興行収入は810万ドルで、前週比マイナス40.8%と興行は堅実。製作費3000万ドルのところ、北米興収2753万ドル、世界興収5083万ドルと成果は決して悪くない。
本作は、『ふたりで終わらせる/IT ENDS WITH US』(2024年)の原作者コリーン・フーヴァーによる同名小説の映画版。出演者はアリソン・ウィリアムズ、マッケナ・グレイス、デイヴ・フランコ、スコット・イーストウッドらで、若い女性客の心をつかんだ。
しかしながら、「首位獲得となりそう」という含みのある記述にせざるをえなかったのは、第2位に同じくランクアップした『ブラックフォン 2』が週末興収800万ドルと僅差だからだ。現在のデータはあくまでも速報値のため、データが確定した段階でランキングが入れ替わる可能性は高い。北米のアナリストやスタジオは、実際の首位は『ブラックフォン 2』だろうと予測しているのが現状だ。
イーサン・ホーク出演、スコット・デリクソン監督による『ブラックフォン 2』は、製作費3000万ドルに対し、北米興収6145万ドル、世界興収1億470万ドルというヒットとなった。ハロウィン興行全体を牽引するほどのパワーはないものの、ユニバーサル&ブラムハウス作品としては『ファイブ・ナイツ・アット・フレディーズ2』に良いバトンを渡すことになる。日本公開は11月21日。
全体としては低調の週末ながら、ランキングの並びは興味深い。第3位の劇場版『チェンソーマン レゼ篇』は、前週の第1位からランクダウンし、週末興収は600万ドル。前週比マイナス66.7%という2週目の下落率は、『劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来』のマイナス75.5%よりは低いものの下げ幅は大きい。日本製のアニメ映画は、やはり初週末にファンが集中する傾向があることが再び証明された。
第4位には、Netflix映画『KPOPガールズ! デーモン・ハンターズ』の再上映がランクイン。8月末にシング・アロング版の2日間限定上映が北米市場を席巻したことは記憶に新しいが、早くも再上映となった今回は、北米最大の映画館チェーンAMC TheatresがついにNetflix作品の上映に踏み切った。しかしながら、今回はNetflix側が前回ほど戦略的に取り組んでおらず、週末興収は530万ドルと事前の予想を下回った。