『君の声を聴かせて』『グッドニュース』で新境地  “変幻自在俳優”ホン・ギョンの現在地

 2022年には、パク・ジフン主演の学園アクションドラマ『弱いヒーロー Class1』で、主人公のクラスメイトで転校生のオ・ボムソク役に。前の学校で不良グループからいじめられていたボムソクは、転校してからも執拗な嫌がらせに遭うが、初めて助けてくれる友人ができる。仲間ができた心強さを得たのも束の間、次第に心の闇に支配され、自分を守ってくれている仲間を自ら裏切るボムソク。未熟ゆえの過ちとひと言で片付けられない酷い行いやバイオレンス描写に目を背けたくなった。おどおどして臆病だったはずが、だんだんと鋭く嫌な目つきの卑しい人格になっていくボムソク。しかし、卑怯者ながらも、絶望を抱える心の奥底の侘しさが垣間見えるボムソクの変貌ぶりを、ホン・ギョンは巧みに演じていた。

 2023年には、同じ事務所の先輩であるキム・テリ主演のオカルトミステリードラマ『悪鬼』に、主人公の高校の先輩でソウル庁強力犯罪捜査隊の警部補であるイ・ホンセ役として出演。以前、キム・テリについてのコラムでも本作について紹介しているが(※2)、人の目には見えない邪悪な「悪鬼」に取り憑かれた主人公と、悪鬼を見ることができる民俗学者が、悪鬼にまつわる真実を追いながら謎の死の真相を暴いていくストーリーがとにかくスリリング。

『悪鬼』©STUDIO S. All rights reserved.

 キム・テリ、民俗学者役のオ・ジョンセ、ホン・ギョンら、達者なキャストが揃う本作は凄みしかなく、次々と起こる怪異にとにかく背筋が寒くなる。不可解な事件に何かと関わっていると考えられる主人公に、学生時代から彼女を知るホンセとして向き合い、先輩刑事とともに事件解決に奔走する若手刑事役をきめ細かに演じていたホン・ギョン。本作でSBS演技大賞のミニシリーズ・アクション部門の優秀演技賞を受賞した。

 キム・テリとは、2025年のNetflix初の韓国オリジナルアニメーション映画『あの星に君がいる』で、今度は声優として共演。2050年のソウルを舞台にした、宇宙飛行士と一度は音楽への夢を諦めたミュージシャンの青年の遠距離恋愛がテーマのロマンティックストーリーだ。同作でホン・ギョンは青年ジェイ役として、声優に挑戦。ナチュラルにジェイの声を聴かせるホン・ギョンの声の芝居もなかなかのものだ。音楽というと、ホン・ギョンはテヨン(少女時代)のミュージックビデオ「Can’t Control Myself」(2022年)に出演していたことがあるが、彼の艶っぽくカッコいい姿が観られるので、気になる方はチェックしてみてもいいかもしれない。

『グッドニュース』Song Kyung-sub/Netflix © 2025

 今後は、ソル・ギョング主演のNetflix映画『グッドニュース』が10月17日から配信。本作でホン・ギョンは空軍中尉のソ・ゴミョン役を演じており、日本からは山田孝之、椎名桔平なども出演。本作は1970年に日本で発生したよど号ハイジャック事件をモチーフにした日韓合作映画で、ハイジャック犯が日本の旅客機を乗っ取り、平壌に向かうように要求。事態を収拾するためにどんな手を使ってでもソウルへと着陸させようとする人たちの奇抜な作戦を描いている。「東京が好きだ」と言っていたホン・ギョン。この最新作でより一層日本での知名度が上がるだろうし、期待以上の姿を披露してくれるに違いない。ホン・ギョンのこれからの出演作も楽しみで仕方がないのだ。

参照
※1. https://lp.p.pia.jp/article/news/438833/index.html
※2. https://realsound.jp/movie/2023/07/post-1382481.html

関連記事