阿部サダヲが本当にカッコよかった! 『しあわせな結婚』“感動”だけで終わらせない最終回

ドラマ『しあわせな結婚』(テレビ朝日系)が9月11日に最終回を迎えた。
最終回の最大の焦点となるのは、ネルラ(松たか子)が隠していた事件の秘密。前回、15年前に布勢(玉置玲央)を殺した犯人がレオ(板垣李光人)であることが明らかになったが、そこには事件の始まりの物語が残されていた。

布勢はなぜ画家としてスランプに陥ったのか。なぜレオを誘拐偽装しようとしたのか。その“なぜ”に、まだ語られていない空白の物語があった。ネルラが布勢と恋人として幸せな日々を送っていた頃、ネルラは遊び心で布勢の画風を真似た絵を描いた。しかし、それが画商をもあざむくほどに評価されてしまい、布勢を名乗りネルラが絵を描くことに。
「君に頼らず頑張ってみるから」と布勢はタッチを変えて自らの画家としての色を模索した。しかし、スランプに入り、そこで寛(段田安則)から「模写でも贋作でも何でもやって、才能の冬の時代を乗り切ればいい」と言われてしまう。布勢の焦りは憎しみへと変わり、レオの誘拐偽装を引き起こすこととなったのだ。つまり、自分が事件の元凶であると、ネルラは自身を責め続けていた。

最終回は幸太郎(阿部サダヲ)とネルラが離婚してから1カ月が経ったところから始まる。突如、失踪したネルラが残したパソコンに残っていた下書きのメールをSSBC(『大追跡~警視庁SSBC強行犯係~』のキャストが出てくるのかと身を乗り出してしまった)が復元。そこに記されていたのは幸太郎への感謝と確かな愛、そして事件の秘密だった。メールは「ひとつだけ気にかかるのは」で途切れており、幸太郎の脳裏によぎったのは布勢の代わりにネルラが描いた絵。まるでゴッホが死後に評価されたように、事件が話題になることでオークションにて1000万円で落札されるまでになっていた。ネルラは自ら絵を切り刻んで罪に問われる道を選ぶ。

そこに幸太郎が立ちはだかる。「今を大切に力強く生きればいい。君は“股関節の女”だろ? 股関節を開いて、力強く生きる女が素敵だと言ったじゃないか。もしそれで君が背負う苦しみがあるなら俺も背負うから。だからもう一回結婚しよう」と“粘り強く”愛を伝え続ける幸太郎に、ネルラはもう一度一緒になることを決める。ひきつった絶望の表情から徐々に希望が湧き出していくネルラの感情の動きが見える、松たか子の芝居に相変わらず惹き込まれる。オアシスによる主題歌「Don't Look Back in Anger」がかかり、言わば最終回のクライマックスシーンなのだが、ネルラが巨大なキャンバス用ハサミを持ったまま幸太郎にハグをしたりと、単なる感動シーンで終わらせないのが『しあわせな結婚』でもある。

この最終回には、ネルラのハサミや“股関節の女”を例にして、第1話〜第2話辺りまでのエピソードやアイテムが数多くちりばめられている。罪を背負うことになった考(岡部たかし)とレオのその後を描くホームドラマとしての最終盤には、再びのレンコンとハンバーグ、幸太郎がネルラにキスを迫るシーンやネルラのイタリア語での寝言も発動している。そして、ネルラの奇妙な寝相を見て、幸太郎は「今夜も妻は果てしなく不思議だ」と心の内に思うのだった。

2020年に放送された阿部と松の共演作『スイッチ』(テレビ朝日系)をもとにして、“カッコいい阿部サダヲ”を大石がイメージしたという『しあわせな結婚』。『不適切にもほどがある!』(TBS系)をはじめとする宮藤官九郎による脚本作品とは異なる、正義感溢れる、カッコいい阿部サダヲ像を打ち立てた印象だ。
その一方で本作で最も話題となったのは、ネルラを演じる松だった。第1話のクロワッサンにかぶりつく“ネルラ食い”から台風の目となり、じわじわと移り変わる表情や奇妙だけと愛らしい、幸太郎や黒川(杉野遥亮)がヒューッと吸い込まれていってしまう唯一無二の魅力を放っていた。俳優として30年以上のキャリアを持つ松にとって、ネルラというキャラクターが新たな代表作とこの先語られていくのは間違いないだろう。元々ドラマのタイトル案にあったという『ネルラという妻』が、大石にとって強いこだわりを持っているのはスピンオフドラマを観れば一目瞭然なのだが、幸太郎の最後のセリフを聞いてこのドラマの中心にいたのは幸太郎とネルラなのだと改めて感じた。
大石静が脚本を手がける、夫婦の愛を問う“完全オリジナルホームドラマ”であり、令和の“マリッジ・サスペンス”。主演を務める阿部サダヲと松たか子は、10年ぶりに夫婦役を演じる。
■配信情報
木曜ドラマ『しあわせな結婚』
TVer、TELASAにて配信中
出演:阿部サダヲ、松たか子、板垣李光人、段田安則、岡部たかし、玉置玲央、金田哲、馬場徹、辻凪子、堀内敬子、小松和重、杉野遥亮
脚本:大石静
監督:黒崎博、星野和成、楢木野礼
ゼネラルプロデューサー:中川慎子(テレビ朝日)
プロデューサー:田中真由子(テレビ朝日)、山形亮介(テレビ朝日)、森田美桜(AOI Pro.)、大古場栄一(AOI Pro.)
音楽:世武裕子
主題歌:Oasis「Don’t Look Back In Anger」(Sony Music Labels Inc.)
制作協力:AOI Pro.
制作著作:テレビ朝日
©テレビ朝日
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