『あんぱん』北村匠海×眞栄田郷敦が“共鳴”する激アツ展開 嵩が手嶌と開く新たな扉

9月4日放送のNHK連続テレビ小説『あんぱん』第114話は、嵩(北村匠海)の物語にとって大きな転換点となった。これまで葛藤しながらも描き続けてきた漫画がついに評価され、懸賞で大賞を獲得する。100万円という大金とともに届いた知らせに、嵩は安堵と喜びの入り混じった表情を見せ、その場に腰を落とした。自分の人生をかけて挑み続けてきただけに、その瞬間に重ねてきた苦労がよみがえったのだろう。そばにいたのぶ(今田美桜)に「のぶのおかげ」と真っ先に感謝を伝える姿からは、ひとりではなく支え合って歩んできた道のりの重さが伝わってくる。
数日後、八木(妻夫木聡)の会社で開かれた受賞祝いでは、嵩を中心にした明るい空気が広がる。机を囲んで談笑する仲間たちの姿は、嵩にとってこれまで以上に心強い支えとなったはずだ。八木は蘭子(河合優実)に宣伝文の執筆を依頼し、彼女の存在が自然に輪の中に加わっていく。にぎやかで笑顔に満ちたひとときの中で、嵩は改めて立ち上がり、皆の前で受賞の感謝を述べる。

「ようやく胸を張って漫画家だと言えるかもしれません。本当にみなさんありがとう」
その言葉は飾り気がなく、心からの実感にあふれていた。これまで“まだ自分は未熟だ”と自嘲するような姿を見せてきた嵩が、自らを「漫画家」と呼ぶことに初めて確かな自信をのぞかせた瞬間だった。仲間や家族に支えられてきた時間が、ようやく報われたことを表すこの言葉は、視聴者にとっても胸に残る場面となった。
翌日、のぶは登美子(松嶋菜々子)に茶道を習っていた。落ち着いた時間が流れる中、訪ねてきたのは、あの手嶌(眞栄田郷敦)である。現代日本を代表する漫画の巨匠として知られる手嶌が、柳井家の門を叩いたこと自体が大きな驚きだった。のぶが点てた抹茶を口にした手嶌は、そのまま居心地のよさからか、眠りに落ちてしまう。そこへ帰宅した嵩が目にしたのは、家の中でぐっすり横になる手嶌の姿だった。思わず声を上げる嵩。その声で目を覚ました手嶌は、嵩に向き直り、驚きの依頼を口にする。

それは、大人のためのアニメーション映画におけるキャラクターデザインを任せたい、というものだった。きっかけとなったのは、嵩が雑誌の表紙に描いたデザイン。そこに込められた線の強さや人間味を、手嶌は見逃さなかったのだろう。突然の申し出に、嵩は思わず息をのむ。これまで漫画家としての道を模索してきた嵩にとって、巨匠からの依頼はまさに予期せぬ未来の扉だった。

「『ロストワールド』が印象的でした」と嵩が憧れを伝えると、手嶌は真っすぐな眼差しで「必ず柳井嵩はすごい作品を描きます」と断言する。そして力強く握手を交わす二人の姿は、次なる創作の旅の始まりを鮮烈に予感させるものだった。そしてそれは、“創作の魂”の共鳴のようにも見えた。
一方で、蘭子は八木に「やってみたいことがある」と心の内を明かす。新たな挑戦への意欲を口にする蘭子の姿は、これまでの彼女の生き方に転機が訪れようとしていることを示していた。しかし、事務所を出たその瞬間、蘭子の前にはある人物があらわれるのだった。蘭子の驚き方からすると、それは思いもよらぬ再会か、あるいは避けてきた過去の因縁のようにも見える。
第114話は、嵩が“漫画家”として胸を張れるようになった節目の回であると同時に、手嶌治虫との運命的な出会いによって新たな世界が開かれるターニングポイントでもあった。嵩が踏み出した一歩がどんな物語を描き出すのか、ますます目が離せない展開となった。
■放送情報
2025年度前期 NHK連続テレビ小説『あんぱん』
NHK総合にて、毎週月曜から金曜8:00〜8:15放送/毎週月曜〜金曜12:45〜13:00再放送
BSプレミアムにて、毎週月曜から金曜7:30〜7:45放送/毎週土曜8:15〜9:30再放送
BS4Kにて、毎週月曜から金曜7:30〜7:45放送/毎週土曜10:15~11:30再放送
出演:今田美桜、北村匠海、江口のりこ、河合優実、原菜乃華、高橋文哉、眞栄田郷敦、大森元貴、戸田菜穂、戸田恵子、浅田美代子、吉田鋼太郎、妻夫木聡、阿部サダヲ、松嶋菜々子ほか
音楽:井筒昭雄
主題歌:RADWIMPS「賜物」
語り:林田理沙アナウンサー
制作統括:倉崎憲
プロデューサー:中村周祐、舩田遼介、川口俊介
演出:柳川強、橋爪紳一朗、野口雄大、佐原裕貴、尾崎達哉
写真提供=NHK





















