『光が死んだ夏』『薫る花は凛と咲く』など　2025年夏アニメで光った“異例のヒット作”4選

良い意味で裏切られた『青春ブタ野郎はサンタクロースの夢を見ない』

　『青ブタ』シリーズはこれまでも安定した人気を誇ってきたが、大学生編に突入した今回は、ファンの支持を新たなかたちで確認させてくれた。舞台が高校から大学に移り、空気感が大きく変わるのではと危惧していたが、蓋を開ければむしろ作品の成熟を実感することになった。

　梓川咲太と桜島麻衣というカップルの関係性は、より落ち着いたものへと進化しつつ、新キャラクター・霧島透子の登場によって物語は再び不可思議な「思春期症候群」に揺さぶられる。その構造が懐かしさと新鮮さを同時に提供しており、長年のファンにとっても頷ける展開だった。

　劇場版『青春ブタ野郎はゆめみる少女の夢を見ない』が興行収入約3.7億円を記録したように、このシリーズの基盤はすでにしっかりしている。だからこそ、大学編という新しいステージへの挑戦には少し身構えていたが、実際に観てみれば自然な流れとして物語に溶け込み、“続きが観られて嬉しい”を超えて“思っていた以上に面白いじゃないか”と感じさせられた。長く続くシリーズだからこそ油断できない、そんな良い意味での裏切りがあった。

配信限定にもかかわらず大ヒット『タコピーの原罪』

　最後に触れたいのは『タコピーの原罪』だ。全6話をストリーミング限定で公開するという決断は、大胆すぎるとすら思えたが、結果は想像以上の成功だった。重たいテーマを妥協なく描ききったことで、短編アニメというフォーマットがここまでの力を持ち得るのかと新鮮な驚きを覚えた。

　本作は観ていて苦しくなるほどの物語だ。愛らしいピンクのタコピーが“ハッピー道具”で少女を救おうとするが、その行動がかえって悲劇を加速させる。ポップな見た目と陰惨な現実の落差が、観る者の感情を抉ってくる。筆者も視聴後、しばらく画面の前から動けなかった。

　地上波では描ききれないテーマに真正面から挑み、短編アニメの新しい可能性を示してくれた。短い尺にぎゅっと詰め込まれた濃さと遠慮のない展開というストーリーの妙と配信で一気に広がったことで、今の時代を象徴する作品として心に残る一作になった。

　『ダンダダン』をはじめとした大作が話題を集めた今期だったが、その陰で思いがけない輝きを放った作品も少なくなかった。思わず息をのむような展開に震えることもあれば、静かに心を温めてくれる物語に出会うこともある。長く寄り添ってきたシリーズの力を感じる一方で、新しい挑戦がもたらす驚きもあった。もしこの夏に見逃したタイトルがあれば、きっと今からでも楽しめるはずだ。

参照
※1. https://times.abema.tv/articles/-/10195873?page=1
※2. https://myanimelist.net/topanime.php?type=airing

■放送・配信情報
『光が死んだ夏』
日本テレビ系にて、毎週土曜24:55〜放送
Netflixにて世界独占
ABEMAにて無料独占配信
キャスト：小林千晃（辻中佳紀役）、梅田修一朗（ヒカル役）、小林親弘（田中役）、小若和郁那（暮林理恵役）、花守ゆみり（山岸朝子役）、中島ヨシキ（巻ゆうた役）、若山詩音（田所結希役）
原作:モクモクれん（KADOKAWA『ヤングエースUP』連載）
監督・シリーズ構成：竹下良平
キャラクターデザイン・総作画監督：高橋裕一
ドロドロアニメーター：平岡政展
プロップデザイン：應地隆之介
サブキャラクターデザイン：渡辺舞、西願宏子、長澤翔子
美術設定：多田周平、高橋武之、曽野由大
美術監督：本田こうへい
色彩設計：中野尚美
色彩設計補佐：越田侑子
3D監督：中野祥典
撮影監督：前田智大
2Dデザイン：永良雄亮、津江優里
編集：木村佳史子
音響演出：笠松広司
音響制作：dugout
音楽：梅林太郎
オープニング主題歌：「再会」Vaundy
エンディング主題歌：「あなたはかいぶつ」TOOBOE
アニメーション制作：CygamesPictures
©モクモクれん／KADOKAWA・『光が死んだ夏』製作委員会
公式サイト：https://hikanatsu-anime.com/
公式X（旧Twitter）：@hikanatsu_anime
公式TikTok：@hikanatsu_anime