Netflix映画『84m²』は日本人も共感必至? “とんでもない事態”にたどり着く韓国スリラー

その一方、ウソンは同僚からもたらされた仕手取引の情報に飛びつく。違約金を払ってもまだ元が取れると考え、売買契約を破棄することを前提に自分の部屋を売りに出し、振り込まれた頭金をビットコインにつぎこむ。情報どおりコインの価値は順調に上昇。ウソンはカーテンを開け、部屋の片づけをする。分不相応な買い物として彼を苦しめるものでしかなかったこの部屋は、これほど明るい場所だったのか! ウソンの表情も見違えるほど明るくなる。マンション内部のシーンが、これまで一貫して冷たく陰鬱な画面で撮られていたため、このコントラストは鮮烈だ。

ところが、希望を取り戻したのもつかの間、1301号室の不気味な住人女性の夫が現われ、ウソンの精神状態は一気に不安定に。そして、明朝コインを売却すれば莫大な利益が得られるという日になって、とんでもない事態が彼に降りかかる。
監督・脚本は、韓国版『スマホを落としただけなのに』(2023年)でデビューしたキム・テジュン。『イカゲーム』シーズン2(2024年)、シーズン3(2025年)、『隠し味にはロマンス』(2025年)など、コンスタントに話題作に出演しつづけるカン・ハヌルがスターオーラを抑え、ごく平凡な人物であり、しばしば愚かな行動をしてしまうウソンを好演。そして、これまた話題作で毎回確実に結果を出しているソ・ヒョヌ(直近ではドラマ『私たちの映画』(2025年))が、1501号室の住人ヨン・ジノを演じて変幻自在の職人ぶりを見せる。変幻自在といえば、ペントハウスの住人を演じるヨム・ヘランのつかみどころのなさも見どころだ。

さて、「とんでもない事態」を切り抜けたあと、ウソンはヨン・ジノとともに真相解明に乗り出す。これまで攻めこまれてばかりいた彼が、他人の家に(いけないことだが)侵入を繰り返すことになるという、いわばベクトルの反転がここで生じる。ところが真相は、さらにとんでもないところにあったのだ——!

ウソンが真相にたどり着くきっかけが、アイディアとしてかなり面白い。しかしここから先は、前半の仕掛けの厚みと豊かさに比べると、スリラーとしてむしろ型どおりのところに落ち着いてしまった感はある。それでも不運なウソンに感情移入したわたしたちは、ハラハラするシーンの連続に、もはや最後まで目を離せないだろう。
■配信情報
『84m²』
Netflixにて配信中
出演:カン・ハヌル、ヨム・ヘラン、ソ・ヒョヌ、チョン・ジノ、キム・ヒョンジョン、パク・ソンイル、カン・エシム、イ・ジョング、ユン・ジョンイル、チョ・ハンジュン
監督:キム・テジュン
Young-Uk Jeon/Netlix © 2025






















