『あんぱん』今田美桜×中島歩の抱擁は最後になってしまうのか のぶに植え付けられた愛国心
航海から早く帰ってきた次郎(中島歩)と共に御免与町に帰ってきたのぶ(今田美桜)。『あんぱん』(NHK総合)第48話では、複雑に揺れるのぶの心情が描かれた。
のぶの故郷で次郎は嬉しそうにシャッターを切る。のぶもカメラを構えてみるが、贅沢品であるカメラとフィルムに対する町の人の視線が気になってしまう。昭和16年12月を迎え、真珠湾攻撃を機に太平洋戦争が開戦。小麦粉が手に入らなくなったことで、朝田パンも休業を余儀なくされている。人々が他人の持ち物に敏感になっている時代。『カムカムエヴリバディ』(2021年度後期)で、安子(上白石萌音)と稔(松村北斗)が楽しんでいたラジオ英語講座の放送が無くなってしまうシーンがあったが、これまで親しんでいた趣味も咎められてしまう。
のぶは撮りたいものがあると自宅へ。乾パンを作っている羽多子(江口のりこ)とメイコ(原菜乃華)の様子や作業中の釜次(吉田鋼太郎)と見守るくら(浅田美代子)の様子を撮影するのぶ。次郎は嬉しそうに蘭子(河合優実)とのぶを撮影。格好を付けたり、魂が抜かれると怯えたり、悲しみを乗り越えて笑い合ったり、今を生きるかけがえのない瞬間がフィルムに焼き付けられた。
穏やかな時間のなか、次郎は結太郎(加瀬亮)の家庭での様子を伺う。結太郎の様子から話題はのぶの幼少期の頃へ。嵩(北村匠海)が描いた絵を見せつつ、嵩をいじめるガキ大将をおっぱらったり、パン食い競争で1位をとったりとのぶのはちきんっぷりを振り返る朝田家の面々。しかし、蘭子の「お姉ちゃん変わったね」という言葉に、のぶは思うことがありそうな複雑な表情を見せていた。こうだと思ったらまっしぐらに突っ走っていたのぶが、今は愛国の鑑になったのだ。国に忠義を尽くす人物というだけでなく、適齢期に結婚をし教師として子どもたちを導く模範的な女性という意味でもあるのだろう。
愛国の鑑としての生き方を褒められたのぶの口元には笑みが浮かびつつも、視線はゆらゆらと彷徨っていた。のぶはこうと決めて突っ走る自分が好きだったのだろう。今は、風を切って走り抜けるようには生きられない。求められている役割があるから。女子師範学校への入学から時間をかけて強制されてきたのぶの愛国心の奥に、幼い頃と何も変わらない本当ののぶが隠れているように感じられた。