『キャスター』阿部寛が斬り込む43年前の“因縁” 命がけの報道に宿る下剋上の精神

 『キャスター』を観ていると、報道は命がけの仕事だと感じる。同じ情報でも取り上げる角度によって、まったく違うとらえ方ができる。そこに報じる側の意見や主張が加わることでニュースは大きな力を持つ。もちろん反発もあるだろうし、少数派の意見には異論が百出するだろう。誤解や偏見にさらされ、握りつぶそうとする者も現れる。報じるもの自身の存在をかけた情報戦が、日々ニュースの現場で繰り広げられているのだ。

 だからだろうか。第8話ラストで本橋(道枝駿佑)が進藤の不正を告発したとき、驚きもありつつ、その反面、不思議と納得する気持ちもあった。本橋が何を意図しているかは後ほど明らかになるとして、彼の中で報道人として真実を見過ごすわけにいかないという覚悟が芽生えた証と感じた。それこそ『ニュースゲート』で進藤が率先して示してきたものであり、まねごとではない信念を抱いたジャーナリストの姿勢から本橋の成長が垣間見えた。

 立場が下の者が上を乗り越える“下剋上”が『キャスター』にもあって、進藤が立ち向かう社会の闇や、報道を生きる道と決めた個人の間で正面からぶつかり合う様子は、思わず画面に見入ってしまう王道感がある。フィクションを前提に日曜劇場が培った精神性をベースとして、この社会の現実にどこまでコミットできるか、最終話まで見届けたい。

日曜劇場『キャスター』

テレビ局の報道番組を舞台に闇に葬られた真実を追求し悪を裁いていく社会派エンターテインメント。圧倒的な存在感で周囲を巻き込んでいく型破りで破天荒な主人公・進藤壮一が、視聴率低迷にあえぐ報道番組『ニュースゲート』を変えていく。

■放送情報
日曜劇場『キャスター』
TBS系にて、毎週日曜21:00〜21:54放送
出演:阿部寛、永野芽郁、道枝駿佑、月城かなと、木村達成、キム・ムジュン、佐々木舞香、ヒコロヒー、山口馬木也、黒沢あすか、堀越麗禾、馬場律樹、北大路欣也(特別出演)、谷田歩、内村遥、加藤晴彦、加治将樹、玉置玲央、菊池亜希子、宮澤エマ、岡部たかし、音尾琢真、高橋英樹
脚本:槌谷健、及川真実、李正美、谷碧仁、守口悠介、北浦勝大
音楽:木村秀彬
プロデュース:伊與田英徳、関川友理、佐久間晃嗣
演出:加藤亜季子、金井紘
©TBS
公式サイト:https://www.tbs.co.jp/caster_tbs/
公式X(旧Twitter):@caster_tbs
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