『べらぼう』横浜流星×染谷将太の駆け出す姿が眩しい 蔦重×唐丸の“夢の続き”が始まる

 「どうやったらこんなふざけた話思いつくんです? 枕を貸して夢を見せる商い。しかも夢から覚めたと思ったら、それもまた夢だったって!」とは、朋誠堂喜三二(尾美としのり)によって書かれた小説『見徳一炊夢』を読んだ、蔦重(横浜流星)の感想だ。

 NHK大河ドラマ『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』第18回「歌麿よ、見徳一炊夢」のタイトルは、その『見徳一炊夢』から取ったものだとわかる。『べらぼう』で夢オチ小説といえば『金々先生栄花夢』が記憶に新しい。

 栄華を極めたと思いきや、それは江戸で立身しようと向かう途中の粟餅屋で粟餅ができあがるまでのうたた寝で見た夢だったという『金々先生栄花夢』。対して『見徳一炊夢』は、親の金を盗んでまで「夢」を買う話だというから、さらに欲深い。ちなみに、こちらは粟餅ではなく出前の蕎麦が届くまでの「一炊の夢」という。

 そんな強欲な話が思いついたのは、きっと喜三二が下半身が不調になるまで遊び尽くしたから。新作をどんどん書いてほしい蔦重は儲け度外視で、喜三二に吉原での「居続け(連泊)」を提案。「宝暦の色男」の異名を持つ喜三二がその話に乗らないわけがなかった。

 しかし、喜三二は寝る間も惜しんで遊んだのだろう。腎虚、今でいうED状態になってしまった。その欲が解消されない日々に、喜三二の下半身は大蛇へと姿を変えて暴れ出す。そこへ松葉屋の女将・いね(水野美紀)が真剣を持ち出して大立ち回りを繰り広げる⋯⋯!

 というのは、まさに喜三二の夢だった。人が見た夢を映像化したらこんなことになるんだという滑稽さ。「こんなのありえない!」とは思いながらも見ている本人は絶叫するほど必死なのだから、なおのことおかしい。

 蔦重は「どうやったらこんなふざけた話を?」なんてたずねていたが、考えてみれば吉原という場所こそ、男に「枕を貸して夢を見せる商い」そのものではないか。どうにか金を作って通ったという人もいただろう。

 吉原は、江戸時代の厳しい暮らしをしていた男たちにとって夢のような場所。しかし、その夢を演出する側の遊女たちが、どんな地獄を味わっているのかも私たちは見てきた。かつては瀬川(小芝風花)が、そして今は誰袖(福原遥)が披露する花魁道中に、人が見せる夢は、覚めても、覚めても、続いていくのだ。

 そんな吉原を「俺にとっては夢みてぇなとこだったよ」と話したのは、すっかり青年になった唐丸(染谷将太)だった。謎の男・ヤス(高木勝也)とともに死んだと思われていたが、捨吉の名前で生きていたのだ。

関連記事