松本まりかの芝居に宿る“含み”の妙 『人事の人見』でのゲームチェンジャー的存在感

 前回の第4話で描かれていたのは、多様性をめぐる物語。企業という組織に属していながら社員の誰もが自分らしく生きられるよう、堀は奮闘した。彼女のあの動きは唐突なものだともいえるものだっただろう。ともに日々を過ごしている人々からすれば、急な“キャラ変”のように映ったのではないかともいえる。しかし松本の発話の調子や振る舞いの変化には、人見のように無邪気で鈍感な者であっても気づいたことだろう。松本の演技はこれまでになく力の入ったもので、堀が自身の限界や無力さを感じて涙を浮かべるシーンなどまさにそうだ。松本のあのパフォーマンスの数々の中に、堀という人間のこれまでの人生を垣間見た。これは私だけではないだろう。

 本作のヒロインである真野直己と比べると、堀の出番は多くはない。しかしごく短くかぎられた時間の中で、松本は堀のキャラクターを人見にだけでなく、私たち視聴者にも端的に提示してみせてきた。やはり、俳優・松本まりかは“場”を支配する力に長けている。自身の演じるキャラクターにスポットライトが当たると、たちまちその“場”の主役に躍り出る。佇まいだけで観る者を魅了できる俳優は、そう多くはない。発する声だけで空間を変容させてしまう俳優は、そう多くはないだろう。このことは下北沢の本多劇場にて上演されたナイロン100℃ 48th SESSION『Don't freak out』(2023年)といった演劇作品でより強く感じたものだ。

 さて、堀の“主役回”であった第4話は、彼女の心の動きが見て取れるものだった。特定の人物のポジションが変わることは、チームワークを変える。松本はこのチームをどう変えたのか。そして今後の展開で明らかになってくるのだろう。主人公の人見を演じる松田とはまた違う、本作のゲームチェンジャーなのではないだろうか。

人事の人見

古い熱血体質の残る大企業を舞台にした人間ドラマ。おバカでピュアすぎる主人公・人見廉と、会社を変えたいと願いながら日々奮闘する真野直己が、個性豊かな人事部の面々と共に会社の中で巻き起こる社員のさまざまな問題と向き合いながら、「現代人の悩み」に立ち向かっていく。

■放送情報
『人事の人見』
フジテレビ系にて、毎週火曜21:00~21:54放送
出演:松田元太(Travis Japan)、前田敦子、桜井日奈子、新納慎也、ヘイテツ、松本まりか、小野武彦、鈴木保奈美、小日向文世ほか
脚本:冨坂友
音楽:カワイヒデヒロ
主題歌:宮本浩次「Today -胸いっぱいの愛を-」(ユニバーサルシグマ)
演出:河野圭太、山内大典
編成企画:草ヶ谷大輔
企画・プロデュース:後藤博幸
プロデュース:橋本芙美、高橋眞智子
制作:フジテレビ
制作著作:共同テレビ
©︎フジテレビ
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