『しあわせは食べて寝て待て』“司”宮沢氷魚が過去を明かす “さとこ”桜井ユキと似た一面も

 風邪引きの人を看病すれば、うつる可能性があるように、自分を大切にしながら誰かに優しくするというのは、どうしてこんなにも難しいのだろう。司と山へ行った数日後、さとこは弓(中山ひなの)から再び部屋を貸してほしいと言われる。傍からは家族に愛されているように見えるが、その実、母は父に言いなりで自分の意見は1つも聞き入れてもらえない弓。誰からも大切にしてもらえない状況で、自分を大切にするのは至難の技だ。

 高麗(土居志央梨)と古着屋を訪れてから少し明るさを取り戻した弓だが、今でもたまに「どうでもいい」という言葉を口にすることがあった。その事情は知らないまでも、病気になった自分をすぐに受け入れられなかったさとこには弓の気持ちが理解できる。「どうでもいい」が行き着く先は死あるのみ。持病のことを知っている人たちからは心配されるが、どうしても弓を放っておくことができなかったさとこは「どうにか生き延びてほしい」という気持ちで部屋を貸し出すのだった。

 抱えている悩みは一人ずつ違って、他人にはどうすることもできない。そうやって諦めて、見て見ぬふりをすることもできる。それに、普通の暮らしさえままならない厳しい世の中で、自分以外の人を助ける余裕はないというのが多くの人の本音なのだろう。

 けれど、困っている人を見たら、手を差し伸べずにいられないさとこと司は似た者同士だ。そんな2人は日当たりの良いこの団地でぽかぽか陽気に包まれながら、人を大切にするのと同じくらい自分のことも大切にするためのちょうどいい塩梅を見つけようとしている最中なのかもしれない。鈴がさとこに山を勧めたのは、あわよくば司とくっついてほしいという思惑があったが、今の2人にはほんの少し距離のある関係が心地良いのだろう。

桜井ユキが“強気”なキャラを脱却 『しあわせは食べて寝て待て』で見せるギャップ

現在、NHKドラマ10枠にて放送中の『しあわせは食べて寝て待て』。4月1日に放送された第1話が、これまでNHKプラスで配信された…

■放送情報
ドラマ10『しあわせは食べて寝て待て』
NHK総合にて、毎週火曜22:00~放送
出演:桜井ユキ、宮沢氷魚、加賀まりこ、福士誠治、田畑智子、中山雄斗、奥山葵、北乃きい、西山潤、土居志央梨、中山ひなの、朝加真由美
原作:水凪トリ『しあわせは食べて寝て待て』
脚本:桑原亮子、ねじめ彩木
音楽:中島ノブユキ
演出:中野亮平、田中健二、内田貴史
制作統括:小松昌代(NHK エンタープライズ)、渡邊悟(NHK)
写真提供=NHK

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