『あなたを奪ったその日から』が描く愛情と復讐の相克 北川景子の静かな迫力に圧倒される
4月21日にスタートした『あなたを奪ったその日から』(カンテレ・フジテレビ系)では、第1話から情念渦巻く人間ドラマが展開された(※本記事ではドラマ本編の内容に触れています)。
本作の主人公は保育園で働く調理師の皆川紘海(北川景子)。夫の景吾(高橋光臣)、娘の灯(石原朱馬)と幸せな日々を送る紘海は、ある日突然、悲劇に見舞われた。
いつどんな時に人生が暗転するかは誰にもわからなくて、誰もが紘海のような立場になりえる。だからこそ、今作を観ることは人生の糧になるはずだ。そんなこと、わざわざ言われなくてもわかっていると反発するのは、子をもつ親なら当然かもしれない。いやむしろ、わかりすぎるくらい切実に感じるから、自身を見つめる意味で必要なのだ。紘海と同じことをしてしまわないために。
原因はアナフィラキシーショック。デリで買ったピザに混入したアレルギー食材によって、灯は命を奪われた。ちょうど3歳の誕生日だった。事故を起こした店側は責められ、紘海は景吾と離婚。しかし、それは始まりでしかなかった。
紘海の心情は直接語られることはないが、表情や動作だけで十分伝わってくる。怖いくらいだ。我が子を失った喪失感と、憎しみによって満たすしかない心の空白を、北川景子は文字通り全身で演じており、誇張ではなく目を離すことができなかった。亡くなった灯と同じ年ごろの園児に娘の面影を重ねて号泣する。包丁を捨てようとして手から離れない。化粧っ気のないうつろな表情に、目だけが異様な光を放っている。大げさではないのに終始漂う静かな迫力にのまれた。自身も母である北川が持てる力を注ぎ込んだ、そんな演技だった。
当初、紘海は失ったものを取り返そうとしていたように見えた。それはまるで娘を奪われた痛みを、相手に同じ痛みを与えることで打ち消せると信じているようだった。惣菜店社長の結城(大森南朋)の家を訪れた紘海はタイミングを逸するが、偶然の出会いから次女・萌子(倉田瑛茉)を連れ歩くことになる。