笠松将×吉原光夫は“後藤家”をいかに作り上げたのか 『ガンニバル』への猛烈な愛を明かす
世界中から注目を集めているドラマシリーズ『ガンニバル』シーズン2がついに完結を迎える。
衝撃の連続となるシーズン2の物語の中で、主人公・阿川大悟(柳楽優弥)と渡り合うもう一人の主人公とも言えるのが、後藤家の当主・後藤恵介だ。シーズン1では謎めいた素性だった恵介の人間性があらわになっていく姿も、シーズン2の大きな見どころの一つとなっている。演じるのは笠松将。数々の作品で爪痕を残し、『TOKYO VICE』(WOWOW)で世界にも“発見”された笠松は恵介役にどう向き合っていたのか。
そして、シーズン2の“ラスボス”とも言える存在・後藤岩男を演じたのが吉原光夫。NHK連続テレビ小説『エール』(2020年度前期)をきっかけに映像作品でも輝きを放つ吉原は超難役にどう挑んだのか。
互いを認め合う笠松と吉原に、本作への熱すぎるほどの思い、想像を絶する作品の裏側を聞いた。【インタビューの最後には、サイン入りチェキプレゼント企画あり】
笠松将「吉原さんはとにかく器が本当に大きい人」
ーー演じられた役柄の設定とご自身の実年齢とはかなり差があります。それにもかかわらず、お二人が幼なじみであり、強い絆で結ばれた関係であることがありありと映像から伝わりました。
笠松将(以下、笠松):ありがとうございます。僕は本作では「当主」という立場でしたが、僕が当主でいることができたのは、後藤家の面々を演じた先輩たちのおかげです。その中でも、特に当主として立ててくれたのが吉原さんでした。本当に心強かったし、力になりました。吉原さんからパワーをずっといただいていました。
吉原光夫(以下、吉原):役柄に合わせて上に立つ人物をもり立てていくことは、俳優であれば誰もがすると思いますが、笠松はそれを無理なくさせてくれる、「こいつについていこう」と自然に思わせてくれる人間でした。恵介の父親役の六角(精児)さんをはじめ、後藤家のみんなが笠松を信頼していました。カメラが回っていないときは、当主っぽくはないんですよ。あれだけ上に立つ人物を演じていると、オフのときもそれが少し残りそうなものですが、偉そうにするわけでもなく、みんなと同じ目線でオフを楽しんでいて。それでいてカメラが回ればスイッチがちゃんと入る。撮影はかなり過酷な環境だったので、笠松の振る舞いに僕も助けられた部分はとても多かったです。
笠松:本当にうれしい言葉です。シーズン2では、撮影時間はもちろん、そうではないところでも、後藤家のみんなで集まって、作品についてずっと話し合って、いろんな時間を共有しました。シーズン1では、岩男はまだ謎めいたキャラクターだったこともあり、吉原さんともそこまでコミュニケーションを取れていなかったんです。でも、シーズン2では岩男の背景が明らかになることもあり、吉原さん自身も心を開いてくださった感じで。後藤家みんなで吉原さんの心をこじ開けたような部分もあり、吉原さんが笑ってくれると「岩男が笑った!」とみんなで盛り上がったりしました(笑)。現場でのあり方の変化は吉原さんの“狙い通り”だったのかもしれないのですが、そんな吉原さんのギャップに僕は萌えていました。後藤家のみんなでそんな時間を過ごしたからこそ、本番でもいろんなトライができました。「当主としての気持ちを作らないと」と意気込むことなく、自然と「この人たちのために」と思わせてくれるメンバーでした。
ーー岩男はシーズン2の“ラスボス”と言っても過言ではない人物です。吉原さんだからこそ成立した役柄だと感じました。
笠松:その通りです。吉原さんはとにかく器が本当に大きい人。劇中の岩男と同様に、現場でも何かあったら自分が責任を取ると思っているのが伝わる方です。だから、すごく甘えさせていただきました。本当に多岐にわたる経験をされている方なので、1人の人間としての魅力がそのまま役柄にも反映されていると思います。
吉原:言い過ぎだよね(笑)。先程、シーズン1からシーズン2の僕の立ち居振る舞いを“狙い通り”と言ってくれたけど、それは笠松も同じで。主演の柳楽くんもあえて僕たちとコミュニケーションを積極的に取っていなかったように、笠松も最初はあえて距離を取っているのはわかりました。強大な『ガンニバル』という作品にどう向き合うべきか、そのために俳優部はどうチームを作っていくべきなのか。僕たちはどうやって“後藤家”になっていくべきなのか、いつも考えながら撮影していたように思います。僕は舞台の経験は積んできましたが、映像作品はまだまだ不慣れで、自分がどうあるべきかいっぱいいっぱいになってしまうときも実はあったんです。でも、そんなときに笠松がいい意味で現場を“壊して”くれたり、自由にしてくれることが何度もあって。それで僕もできることがたくさん増えたんです。笠松も先程話していたように、自然とみんなが後藤家になっていきました。あとは、後藤家の一員である(中村)祐太郎がムードメーカーになって、みんなを盛り上げてくれていたのも大きかったです。笠松が現場を引き締めるために厳しい面を見せて、孤独になりそうなときは裏で支えてくれていました。
ーー吉原さんから笠松さんが“現場を壊す”という言葉がありましたが、本作のメイン監督の片山慎三監督も“壊す”方だと聞いたことがあります。
吉原:片山監督は「俳優が混乱してからが勝負」と言ってることがありました。言葉が合ってるか分からないですが、「俳優が疲れたり、俳優があるべき姿が分からなくなってからが、見たい」と。とてもクレイジーだし、変態だなと思います(笑)。でも、そこまでしてカメラの先にある真実、リアリティを捉えたいんだなと。現場では何が正解か分からなくなっていくので、みんなしんどかったと思います。
笠松:本当にその通りで。作品を作るときって、俳優部もスタッフの皆さんも監督も、みんななにかと“戦っている”と思うんです。いい作品を作るために昨日の自分と戦うこともあれば、撮影時間と戦うこともあるし、到達したいなにかとみんな戦っている。片山監督の場合はその戦う相手が“時代”のような気がしています。とにかくスケールが大きい。シーズン1のときは片山監督の意図が全くわからなくて、衝突してしまったこともあったんです。そんなときも吉原さんが助けてくれていました。シーズン1の打ち上げや、シーズン2に入る前の準備段階で少しずつ片山監督の思いが理解できて、シーズン2では100%ではないと思いますが、片山監督と同じものを見れていたと思っています。それが映像にも反映されているのかなと。
ーーいち視聴者の立場からすると、シーズン1が「ここで終わり?」というタイミングだったので、シーズン2に入るにあたり、気持ちの入れ方が難しいのではと感じていました。でも、むしろ間の時間があったからこそ活きた部分があったと。
吉原:空白の時間があってよかったのは間違いないと思います。
笠松:シーズン1は役者全員が探り合っている感じだったんです。物語自体もどこに向かうのか探っている。でも、シーズン1からシーズン2の間にみんなが整理ができて、全員が「全力を出せる!」と理解して挑んでいた感覚がありました。だから、自分が参加している作品ではありますが、本当にシーズン2が面白すぎて。このチームのみんながとにかく大好きなんです。