『あんぱん』嫉妬に揺れる北村匠海の“甘酸っぱい青春” 再び現れた松嶋菜々子の思惑は?
後日、草吉(阿部サダヲ)や蘭子(河合優実)、メイコ(原菜乃華)とともにパン配達の手伝いに向かったのぶ。海岸で4人がかき氷を囲んで語らう中、遅れてやってきたのが嵩と千尋。かき氷の代金は、嵩のおごりだ。当時の大卒初任給が90円だったことを思えば、嵩が得た賞金の価値がわかる。照れ隠しのようにじゃれ合う嵩と千尋の取っ組み合いは、どこか兄弟のようで微笑ましい。
だがその後、のぶが千尋に、あのパン食い競走の“恩人”であることへの感謝を伝える場面では、再び嵩の表情が曇る。「女でも思いきり夢を追いかけてもいい」と語るのぶの言葉に千尋が見せた笑顔が、嵩の心をまたざわつかせる。自分の居場所が少しずつ遠ざかっていくような感覚――それを嵩は、うまく言葉にできない。
「俺、めちゃめちゃ暴れたくなった」。嵩のそんな本音が思わず漏れたのも、感情の振れ幅の大きな一日だったからかもしれない。
そして物語は、思いもよらぬ再会で揺れる。草吉と笑い合っていた嵩の前に、突如姿を現したのは、8年前に家を出ていった母・登美子(松嶋菜々子)。どこかで見たことのある佇まいに、嵩の表情が一瞬で凍りつく。優しく声をかける登美子だったが、その柔らかな声色と、8年という空白の重さが、嵩の心を静かに軋ませていく。
第14話では、のぶの“原点”、嵩の“葛藤”、そして家族の“再会”が重なり合いながら描かれた。それぞれが過去と向き合い、未来への一歩を踏み出し始めた回でもあった。夢を見つけた者、まだ答えの出せない者、そして夢を追いかけられなかった者、登場人物の人生がゆっくりと交差しながら、物語は確実に“その先”へと進んでいく。
■放送情報
2025年度前期 NHK連続テレビ小説『あんぱん』
NHK総合にて、毎週月曜から金曜8:00〜8:15放送/毎週月曜〜金曜12:45〜13:00再放送
BSプレミアムにて、毎週月曜から金曜7:30〜7:45放送/毎週土曜8:15〜9:30再放送
BS4Kにて、毎週月曜から金曜7:30〜7:45放送/毎週土曜10:15~11:30再放送
出演:今田美桜、北村匠海、加瀬亮、江口のりこ、河合優実、原菜乃華、細田佳央太、高橋文哉、中沢元紀、大森元貴、二宮和也、戸田菜穂、浅田美代子、吉田鋼太郎、竹野内豊、妻夫木聡、阿部サダヲ、松嶋菜々子
音楽:井筒昭雄
主題歌:RADWIMPS「賜物」
語り:林田理沙アナウンサー
制作統括:倉崎憲
プロデューサー:中村周祐、舩田遼介、川口俊介
演出:柳川強、橋爪紳一朗、野口雄大、佐原裕貴、尾崎達哉
写真提供=NHK