『あんぱん』嫉妬に揺れる北村匠海の“甘酸っぱい青春” 再び現れた松嶋菜々子の思惑は?
学校の先生になるという夢を見つけたのぶ(今田美桜)。NHK連続テレビ小説『あんぱん』第14話では、そのきっかけとなった“あの日”の記憶が、ひとつの線でつながっていく。
うさ子(志田彩良)から、貴島(市川知宏)が休暇を終えて海外へ帰ってしまうと聞いたのぶ。「まだお礼ゆうちゃあせん」と慌てて駅に駆けつけると、列車に乗る前の貴島の姿があった。迷わずのぶは告げる。「中尉さんのおかげで、自分の夢が見つかった気がするがです」。のぶが目指すのは、女子師範学校への進学と、体操の教師という新たな未来。あのラジオ体操の日々が、彼女の中で確かな目標となって芽を出していた。
そしてもう一つ、夢を見つけたきっかけとなった大事な出来事が明かされる。パン食い競走で転びそうになった自分に手を差し伸べてくれた“あの子”が、千尋(中沢元紀)だったと知ったのだ。自分を励まし支えてきた恩人が、ずっとそばにいたことに気づいたとき、のぶの中で何かが静かにほどけていく。
「女でも思いきり夢を追いかけてもいい」。あのとき差し出された手は、のぶの人生を変える第一歩だった。幼い頃に感じていた全能感、どこへでも走っていける気がしたあの瞬間。その原点に立ち返ったのぶの目には、もう迷いはなかった。
一方その頃、新聞社に出した漫画が賞を獲った嵩(北村匠海)は、初めて“自分の描いた物語が誰かに届いた”という実感を噛みしめていた。賞金入りの為替を手にし、ささやかながらも大きな一歩を踏み出した嵩。朝田家の人々が自分のことのように喜んでくれたことが、何よりもうれしかった。
だが、のぶが千尋に用事があると知った途端、嵩の胸にはざわつく感情が生まれる。祝福の輪の中にいながらも、笑顔の奥に浮かぶのは不安とも嫉妬ともつかない戸惑い。北村匠海の眼差しからにじみ出るその機微が、嵩の心の内を丁寧に映し出していた。