『対岸の家事』が描く“同僚”の輪 ディーン・フジオカが完璧主義な専業主夫を好演

 中谷の妻でドバイで単身赴任中の樹里(島袋寛子)に育児日報を送り、定期的にオンライン会議で子育ての進捗を共有するのみならず、“アジェンダ”形式で持ち込む様子にも、仕事脳のみで育児や家事に当たろうとするがための中谷の行き詰まり感が見えたようにも感じた。

 そんな中谷の娘・佳恋(五十嵐美桜)が熱性けいれんを起こし、手も足も出なかった際に繋がったiPadでの詩穂との通話が、中谷親子にとっての命綱となった。

 「一緒に乗り越えられたらいいと思うんです。私たちは子どもがいるっていう共通点があるだけで、年齢も性別も生き方も何もかも違うし、友達とも違うけど、協力しませんか?」と、あのとっつきにくい中谷に言える詩穂はやはり素敵だ。ワーママの礼子(江口のりこ)にとって、ベランダ越しの会話の中で愚痴をこぼせる詩穂との時間が欠かせないものになっているように、中谷にとっても、会えば憎まれ口を叩いてしまうものの、平日日中に子どものことを話せる彼女との時間がこの上なく貴重なものになっていたのは間違いないだろう。

 賃金の発生しないことは仕事ではないと言い切っていた中谷が、詩穂との関係を「同僚」という2文字で表現していたことに、彼自身の中での固定概念が解きほぐされ、自分が対峙していることへの正当な評価が下せるようになっているのだろう変化が感じられた。家事や育児がどれだけ大変な労働か重々わかった上で、詩穂の話していた「賃金以外の報酬」にも触れられた中谷は、「自分の力や努力だけではどうにもならないこと」が世の中にはあることを体感し、自身の弱さを認め周囲に助けを求められる強さを手にしたのではないだろうか。

 礼子も中谷も詩穂に「迷惑をかけて申し訳ない」と謝っていたが、“親しき中にも礼儀あり”はもちろんながら“お互い様”と思える柔軟さや、迷惑を掛け合える余裕を共有し合えることこそが、詩穂が言う「一緒に乗り越える」「協力」に繋がるのだろう。さて、中谷と礼子も接点が出来た中で、この“同僚”の輪を広げていくことはできるのだろうか。

火曜ドラマ『対岸の家事~これが、私の生きる道!~』

朱野帰子による小説『対岸の家事』を原作としたヒューマンドラマ。専業主婦の主人公・詩穂が、生き方も考え方も正反対な「対岸にいる人たち」とぶつかり合いながら、自分の人生を見つめ直していく模様を描く。

■放送情報
火曜ドラマ『対岸の家事~これが、私の生きる道!~』
TBS系にて、毎週火曜22:00〜22:57放送
出演:多部未華子、江口のりこ、ディーン・フジオカ、一ノ瀬ワタル、島袋寛子、田辺桃子、松本怜生、川西賢志郎、永井花奈、寿昌磨、吉玉帆花、五十嵐美桜、中井友望、萩原護、西野凪沙
原作:朱野帰子『対岸の家事』(講談社文庫)
脚本:青塚美穂、大塚祐希、開真理
プロデューサー:倉貫健二郎、阿部愛沙美
演出:竹村謙太郎、坂上卓哉、林雅貴
編成:吉藤芽衣
製作:TBSスパークル、TBS
©TBS
©朱野帰子/講談社
公式サイト:https://www.tbs.co.jp/taigannokaji_tbs/
公式X(旧Twitter):@taigan_tbs
公式 Instagram:taigan_tbs
公式TikTok:@taigan_tbs

関連記事