生田斗真、役者としての四半世紀 『俺の話は長い~2025・春~』が映す円熟のかたち

 2025年のスペシャルドラマでは、春海(清原果耶)の帰省や実家の売却話など、新たな展開が加わるが、岸辺満という人物の根っこは何も変わらない。だからこそ、観ていて安心できる。姉・綾子(小池栄子)との言い合い、縁側での沈黙。そこには、5年という時間の重みと、家族という存在の複雑さが柔らかく滲んでいた。

 一方で、Netflix映画『Demon City 鬼ゴロシ』では、その“静けさ”が全く異なるかたちで立ち現れる。生田が演じたのは、妻子を失い復讐に燃える元殺し屋・坂田周平。セリフはほとんどない。表情と肉体のみで怒りと悲しみを語る役。アクションや血しぶきが支配する暴力的な世界の中で、彼の内面の空白が強烈な静けさとして映る。無言の闘争、鋭く射抜くような眼差し、鍛え上げられた身体の動き。どれもが、“語らない演技”としての完成度を示している。『俺の話は長い』とは真逆に見えるが、どちらにも共通するのは“余白”の多さだ。台詞で語らず、説明せず、ただそこに“生きている”こと。それができるからこそ、演技が人の心を打つのだろう。生田という俳優には、変わらない部分と変わり続ける部分が共存している。デビューから四半世紀。常に新しい役に挑戦しながら、どこか「今もあの頃のまま」だと感じさせる。

 生田はいま、“円熟”という言葉を背負い始めている。それは単に経験年数の問題ではなく、どんな場面でも“自分を出しすぎない”ことができる俳優になったということだ。『俺の話は長い~2025・春~』で描かれる家族との何気ない日々。『Demon City 鬼ゴロシ』で描かれる怒りと孤独の暴力。そのどちらにも共通するのは、人間の本音が浮かび上がってくる演技だ。台詞の裏にある感情、仕草の先にある背景。それを感じ取らせる芝居は、決して声高ではない。でも、その静けさの中にこそ、生田斗真という俳優の現在地がある。

 この先も彼はきっと、ジャンルや役柄の枠を超えて、“俳優であること”を続けていくのだろう。そう思わせてくれるだけの説得力が、彼のたたずまいにはある。

『俺の話は長い』

5年前、すったもんだあって県会議員の秘書となったもののすぐにクビ。満は再び喫茶店を営む母親に寄生するニート生活へ。そんな中、ついに喫茶店&実家の売却話が。再び勢ぞろいした家族による屁理屈合戦! 果たして満はダメ男から脱却し、自立への道を歩み出すことができるのか。

■放送情報
『俺の話は長い~2025・春~』
日本テレビ系にて、3月30日(日)、4月6日(日)22:30~23:25放送
出演:生田斗真、安田顕、小池栄子、清原果耶、原田美枝子、杉野遥亮、西村まさ彦
脚本:金子茂樹
演出:中島悟
チーフプロデューサー:荻野哲弘
プロデューサー:櫨山裕子、岡宅真由美(アバンズゲート)、柳内久仁子(AX-ON)、難波利昭(アバンズゲート)
制作協力:AX-ON、アバンズゲート
©日本テレビ
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