『おつかれさま』がフォーカスする“人の温かさ” 母娘3代が紡ぐ珠玉の台詞は人生の応援歌

―変わるのは月の形、心は老いぬー
―徳を積んで生きていきな 親の徳も罪も子に引き継がれるからー

 Netflixで配信中の『おつかれさま』が非英語圏世界ランキング2位(3月19日時点)とヒット街道を爆走中だ。

 IU、パク・ボゴム、ムン・ソリ、パク・ヘジュンらが共演する本作は、1950年代の済州島から現代のソウルを舞台にした、ある夫婦の一代記を描いたロマンスヒューマンストーリーだ。

 主人公であるエスンは、子役をキム・テヨン、少女時代をユン・ソヨン、若い時代をIU、現代をムン・ソリがそれぞれ演じている。エスンの夫であるグァンシクは、子役をイ・チョンム、少年時代を注目株のムン・ウジン、若い時代をパク・ボゴム、現代をパク・ヘジュンがそれぞれ演じており、壮大な人生物語となっている。なかでもIUは、エスンとエスンの娘であり現代を生きるクムミョンの2役を、圧倒的な演技力で巧みに演じ分けている。

 物語は、エスンの幼少期から人生の最期の章までを、四季になぞらえ描いていく。第1章は「春」で、エスンの人生の春、芽生えの時期を描いた。エスンと母グァンネ(ヨム・ヘラン)の母娘の親子愛に、グァンシクとの恋の芽生えから愛への移り変わりを島の人々との関係性も絡め、人情味溢れた物語が繰り広げられた。

※以下、第5話から第8話までのネタバレを含みます

 第2章「夏」では、夫婦となり子宝に恵まれたエスン(IU)と、グァンシク(パク・ボゴム)夫婦を中心に、現代のエスン(ムン・ソリ)、グァンシク(パク・ヘジュン)と、娘クムミョン(IU)の物語が描かれているが、第1章からさらに涙の展開となった。

 エスンとグァンシクは、生活に困窮し困り果てるも、エスンの祖母チュノク(ナ・ムニ)の助けによりグァンシクは船を手に入れ船長となった。船長となったグァンシクの働きにより、エスンら家族はみるみるうちに豊かになっていく。

 豊かになったグァンシクは、エスンの母グァンネが海女で稼いだ金で買った家を見つけて購入する。グァンシクのエスンを想う優しさと、家族のために働く漢気が発揮される場面に、エスンとともに感動する。エスンに助けられてばかりで、良く言えば朴訥、なんだかボーっとしたところのある穏やかなグァンシクだが、なんといい男に育ったのだろう。パク・ボゴムが演じているので、より一層良い男に見えるのは、彼の持つ天性の愛嬌の持つ力だろう。

 夫婦仲睦まじいエスンとグァンシクは、クムミョンの下に、男児2人に恵まれる。意地悪だった姑ゲオク(オ・ミンエ)も、グァンシクの祖母で祈祷師のマクチョン(キム・ヨンリム)も、手のひらを返したように福を運ぶ嫁としてエスンに接するようになっていた。跡継ぎとなる男児を生むことに対する、嫁への呪縛が女性たちを苦しめてきたことがよくわかる。一方のエスンは、船も祖母の力で買うことができ、男児2人を出産して、堂々の強さを発揮している。まさに人生の「夏」を謳歌するエスンとグァンシクだが、家族の幸せが一転奈落の底に突き落とされることになる。

 新しい船は、龍王様の守りによって順調に大漁を重ねるが、ある日、グァンシクは船を新しく塗装し直す。しかし、「女性を船に乗せると龍王様の怒りに触れる」という船の禁忌をおかしてしまう。娘クムミョンが船に乗ろうとするのを止められなかったエスンは、共に乗船し、龍王様の悪口まで言ってしまう。

 ここで嫌な予感がよぎる。そういえば……と、エスンが以前、済州島の守り神である「トルハルバン」の鼻を叩いたことを思い出す。やんちゃなエスンの気性を表す行動だ。あの時は姑ゲオクが謝罪したが、今回はグァンシクが「龍王様が怒るよ」と言ったきりだ。「あぁ、どうか龍王様の怒りにふれることがありませんように……」という願いも虚しく、一家にとんでもない不幸が訪れてしまう。台風の日に、エスンとグァンシクは次男を亡くしてしまうのだ。我が子を半狂乱になって探し、見つけた我が子を抱きしめて足を温めようとするエスンの姿に涙が溢れる。IUの鬼気迫る演技は、全身から悲痛な叫びが聞こえてくるようだ。

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