
北村一輝×常盤貴子×迫田孝也 最終章突入『御上先生』の説得力を担う“大人”たち
文部科学省のエリート官僚・御上孝(松坂桃李)が官僚派遣を受けてとある高校の3年生の担任となり、教育現場を腐敗させる権力に立ち向かうドラマ『御上先生』(TBS系)。名門高校に通う生徒たちが御上とともに学び、単純な学力だけではなく「考える力」を身に着けて成長していく中、最終回に向けてストーリーが大きく動き出した。
※本稿には第8話までのネタバレを含みます
文部科学省のエリート官僚・御上孝(松坂桃李)が官僚派遣を受けてとある高校の3年生の担任となり、教育現場を腐敗させる権力に立ち向かうドラマ『御上先生』(TBS系)。名門高校に通う生徒たちが御上とともに学び、単純な学力だけではなく「考える力」を身に着けて成長していく中、最終回に向けてストーリーが大きく動き出した。
御上や是枝文香(吉岡里帆)といった若い教師たち、生徒たちといった若手キャストの熱量が印象的な本作。しかし、それぞれが秘密や目的を抱えて動く大人たちも重要な要素となっており、物語が進むにつれてますます存在感を発揮している。
常盤貴子(冴島悠子役)
まずは常盤貴子が演じる隣徳の元英語教師・冴島悠子。
報道部の生徒である神崎(奥平大兼)に同僚とのW不倫を暴く記事を書かれたことで学校を辞めた彼女の現在、官僚試験中に殺人事件を起こした真山弓弦(堀田真由)が彼女の娘だと発覚したことが、隣徳学園や3年2組に大きな波紋を起こしていく。
「真実」を求めて再び取材を始めた神崎とのシーンが多いのだが、静かに、まっすぐ神崎を見つめる瞳が非常に印象的だ。
神崎に「これ以上調べない方がいい」と警告し、「あなたのせいじゃない」と突き放す態度こそ冷たいが、その裏にはあたたかい気遣いが感じられる。繰り返し「元」教師であることを強調しながらも、教師という仕事に対する愛情やプライドも伝わってくる彼女の凛としたしたたかさ強さかに惹きつけられる。
さまざまな思いを抱えながら、何かを守るために言葉を飲み込むような常盤の演技が光っている。冴島が頑ななまでに隠す「真実」が何なのか、この後の展開からも目が離せない。
北村一輝(古代真秀役)
続いて、隣徳学院の理事長・古代真秀(北村一輝)。
校内を歩き回って生徒たちと気さくに話し、教室に行けない生徒が理事長室で勉強するのを許可するなど、柔軟で生徒思い。助成金などを目的に官僚派遣を受け入れる、したたかな経営者の一面もある。北村の自信に満ちた笑顔、カリスマ性を感じさせる誠実な表情がハマり、生徒からも慕われる理事長というキャラクターに説得力が生まれている。
一方、溝端主任を繰り返し「みぞばた」と呼んで「みぞはたです」と訂正させるなど、人を食ったようなところがあったり、トラブルが起きると溝端に火消しを命じたり。隣徳学院が抱える闇に深く関わっていることも早い段階で明らかになっており、怪しさも満点だ。
それでいて学校のやり方に疑問を抱いて直接話に来る神崎、生徒たちの「考える力」を伸ばす御上を高く評価しているようにも見え、腹の中が読めない。御上や生徒たちとともに過ごす中で成長した是枝の「生徒たちより自分が主役」という言葉が言い得て妙だ。
隣徳ブランドを何よりも重視し、学園内部の人間はもちろん政治家すら利用しようとする、一筋縄ではいかない男を、北村は実に魅力的に演じている。