『おむすび』が描くコロナ禍の医療現場 苦悩する結に翔也が送ったメッセージ

 『おむすび』(NHK総合)第114話では、結(橋本環奈)が翔也(佐野勇斗)と玄関越しに言葉を交わした。

 第23週「離れとうてもつながっとうけん」ではコロナ禍の医療現場を描く。結が勤務する新淀川記念病院で陽性患者の受け入れが始まり、医師の森下(馬場徹)と桑原(妃海風)が担当になった。結たちNSTも回診の回数を減らして対応する一方で、手紙でコミュニケーションを取り、病院食を見直すことでサポートする。配膳係に濃厚接触者が出て、結と石田(吉田剛明)は配膳を手伝った。

 外から見て「大変」な状況は、内部からは別の見え方をすることがある。あの時、私たちの日常は一変したが、最前線にいる医療従事者にとって、そこは文字通り戦場だったことを知らせていた。隔離エリアで医療に従事する森下は、目の前の命と必死に向き合っている。桑原は親族に感染させないようにホテル暮らしをしていた。同じ病院で働く結に、2人は胸の内を打ち明けた。

 『おむすび』は医療従事者の家族に光を当てる。濃厚接触者がいる家庭では、基礎疾患を持つ家族への感染拡大に注意が必要だ。桑原の話を聞いて、結が考えたのは聖人(北村有起哉)のこと。帰りを待つ家族に電話を入れて、大阪で一人暮らしをすると伝えた。

 ひとけのない大阪・十三の街並みを見て、筆者も当時の状況を思い出した。ドラマ終盤に設定されたコロナ禍は、視聴者のほぼ全員が当事者という意味で、それまでのエピソードと異なる。震災後、平坦に見えた結の人生に立ちはだかった大きな試練と言えるだろう。

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