志田未来&夏帆の“淡白さ”が『ホットスポット』にもたらすリアリティ 日常とSFの架け橋に

 『ホットスポット』(日本テレビ系)がついに最終回を迎える。どこか軽妙な空気感が漂う本作の空気感を支える存在として、終盤のキーパーソンとしてふるまいはじめたのが、志田未来と夏帆である。ともに子役として活躍し、着実にキャリアを積み重ねてきた2人が、コメディエンヌとしての才を存分に発揮している。

 志田は、1999年に芸能界入りし、『女王の教室』(日本テレビ系)での生徒役で注目を集めた。『14才の母』(日本テレビ系)では未成年の妊娠という重いテーマを真正面から演じ、その後も映画『誰も守ってくれない』や『正義の味方』(日本テレビ系)などで卓越した演技力を発揮。役柄の持つ感情の機微を繊細に表現することに長け、シリアスな作品においては圧倒的な説得力を持ってキャラクターを成立させてきた。『14才の母』では、最初は戸惑いながらも母親になろうとする少女の心の揺らぎを繊細に描き、『誰も守ってくれない』では、事件の渦中に巻き込まれた少女の絶望感と、それでも前に進もうとする意思の間を見事に演じ分けていたのが印象的だ。志田はセリフの抑揚や間の取り方においても卓越したセンスを持っている。感情を爆発させる芝居も見事だが、それ以上に抑えたトーンの中で感情をにじませる芝居が巧みなのだ。

 夏帆は2007年に公開された『天然コケッコー』で初めて主演を務める。瑞々しい演技で高い評価を得たが、以降は『海街diary』や『ブルーアワーにぶっ飛ばす』など、繊細で内省的な役柄を多く演じてきた。だが、夏帆の真骨頂は、感情の起伏を巧みに表現することにある。バカリズム作品では『架空OL日記』(読売テレビ・日本テレビ系)や『ブラッシュアップライフ』(日本テレビ系)などで、抜群の間合いを活かしたコミカルな演技を披露した。特に『ブラッシュアップライフ』での何気ない日常の中に潜むシュールな笑いを成立させる役割を担い、そのセンスが高く評価された。

 第9話では、町の命運を握るホテル売却計画がいよいよ動き出す中、瑞稀(志田未来)の“超能力者”としての力が発揮された。この突拍子もない設定が、本作のトーンをさらに際立たせる。淡々と日常を描く(場合によっては「社会派」的な一面もある)ドラマの中に、あえて超常現象を組み込む。この大胆な演出を成立させたのが、志田の演技だ。彼女は超能力という荒唐無稽な要素を、どこかリアリティを持って演じる。大げさに誇張するのではなく、瑞稀というキャラクターの一部として自然に落とし込むことで、視聴者は違和感なく物語に引き込まれるのだ。瑞稀が持つ“超能力”という非現実的な要素が、ドラマのテーマを一層際立たせているのは間違いない。超能力というフィクション要素を通じて、逆説的に現実の問題がより鮮明に映し出されており、物語のリアリティを崩すどころか、むしろドラマの本質を際立たせている点も興味深い。社会問題を描きつつも、それを一歩引いた視点で捉えられるのは、こうしたコメディ的な要素があるからこそだろう。

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