優香が考える時代劇の醍醐味 「ひとつひとつが丁寧で、今の日常には全くない世界観」
数々の時代劇で主演を務めてきた北大路欣也が、自身の理想であり憧れの人物と語る主人公・三屋清左衛門を演じるオリジナル時代劇シリーズ最新第8作『三屋清左衛門残日録 春を待つこころ』が時代劇専門チャンネルで放送。
今作で青年剣士と出会い、新たな絆を結んでいく清左衛門。周囲をシリーズおなじみの顔が支える。なかでも清左衛門が「本当に気が利く」といつもべた褒めなのが、清左衛門の長男の妻・里江。
シリーズにわたって里江を演じてきた優香に、人気作の中心に立つ北大路の人柄や、時代劇への出演を重ねてきて感じる今の思いを聞いた。(望月ふみ)
“別世界”だからこその時代劇の楽しさ
――人気シリーズ8作目です。いま着られている衣装もステキですが、優香さんは着物もとてもお似合いです。
優香:実は欣也さんに「優香ちゃんは着物が着崩れないね。着物を上手に着るね」と最初の頃に言っていただきました。「ここ(胸元)がヨレないし、すごくキレイに着るね」と。すごく嬉しくって。着物って締めつけられるけど、着ていると安心するし、好きです。この作品の現場もお着物やかつらはその世界に浸れる要素です。あと京都なので、いい緊張感があるんですけど、いざ現場に入ると、とても落ち着きます。
――落ち着く、その心は?
優香:お着物もですが、撮影所のセットが好きな空間なんです。私、椅子に座って何かをするよりも、たとえば家でもソファに座るより、ソファの下にペタっとお尻をつけて座ってしまうほうが好きで。撮影所では、木の板の上に正座するのはすごく痛いんですけど(笑)、畳の上はとても落ち着きます。
――シリーズを通して演じている里江は、今作でも清左衛門から「料理上手で気が利いて」とべた褒めです。
優香:一番最初に放送された2016年(「登場篇」)のときは、設定がかなり若くて、監督さんからも「幼い感じ」とお願いされていました。当時私は35歳だったと思いますけど、普段より高い声にした記憶があります。その後シリーズでも子どもが生まれたりして、落ち着いてきました。里江はお義父様(清左衛門)のことが大好きですし、旦那様(松田悟志)よりもお父様と一緒にいることのほうが多いのですが、本当に里江のような人があの時代の理想の妻、娘なんだろうなと。やっていて、普段の私と全然違います(笑)。
――本作やほかの時代劇も数多く経験されてきて、時代劇の作法が日常でふと出てしまうことは?
優香:ないですよ(笑)。お茶を出すときとかも、丁寧にスッととかじゃなくて、ドーン!って感じです(笑)。それにこの作品で、私は飲んだり食べたりする場面はないんです。この時代は男性が先に食べる。今とは違うことがたくさんあります。刀を受け取るときも、絶対に素手では受け取らない。刀は武士の魂。それを毎日、「おかえりなさい」と言って受け取る。ひとつひとつが丁寧で、今の日常には全くない世界観です。三つ指ついて「おかえりなさい」なんて、まずないし(笑)、別世界だから楽しいのもあると思います。