小野花梨は今後のエンタメ界を背負う存在だ 『べらぼう』で担う重要なポジション

 第9話における小野の役割は、悲劇のヒロインになることではなく、外からは華やかに見える吉原の実態を伝えることだったのだと思う。彼女と井之脇の演技が、その悲痛な声と表情が、決して結ばれることのない蔦重と瀬川の未来を暗示してみせた。自身たちのポジションを的確に把握したうえでの、素晴らしいパフォーマンスだったといえるだろう。

 子役期から俳優活動をスタートさせた小野は、まだ20代半ばにして、すでに20年近いキャリアを持っている存在だ。現在は『べらぼう』と並行して、主演を務めるドラマ『私の知らない私』(読売テレビ・日本テレビ系) が放送中であり、2024年は映画『ミッシング』や配信ドラマ『透明なわたしたち』(ABEMA)などで重要な役どころを担っていた。朝ドラ『カムカムエヴリバディ』(2021年後期/NHK総合)で“一人二役”を好演していたことも、多くの視聴者に鮮明に記憶されているのではないだろうか。強いメッセージ性を持った『プリテンダーズ』(2021年)のような映画でも堂々と主演を張っているし、間違いなく、これからのエンターテインメント界の中心に立っていく存在だ。

 その彼女が初めての大河の舞台で、これから何をやってのけるのか。何事も「初めて」は一度きり。細かな所作にいたるまで、この目に焼き付けようと考えているしだいである。

■放送情報
大河ドラマ『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』
総合:毎週日曜20:00〜放送/翌週土曜13:05〜再放送
BS:毎週日曜18:00〜放送
BSP4K:毎週日曜12:15〜放送/毎週日曜18:00〜再放送
出演:横浜流星、小芝風花、渡辺謙、染谷将太、宮沢氷魚、片岡愛之助
語り:綾瀬はるか
脚本:森下佳子
音楽:ジョン・グラム
制作統括:藤並英樹
プロデューサー:石村将太、松田恭典
演出:大原拓、深川貴志
写真提供=NHK

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