北村有起哉&大鶴義丹の背後に見えた偉大なる父 “呪いが解けない”『おむすび』らしさ
20代、30代の視聴者は、第21週、どんなふうに受け止めたのだろうか。永吉さんが人助けをたくさんしてきたおかげで愛されて、彼のためなら動く人がたくさんいて。その「米田家の呪い」という家訓を受け継いだ結は、重症妊娠悪阻で食欲のない患者のために、彼女の食べたい母親の味噌汁の味を再現できるように、同僚の栄養管理士に頼み込み、遺された佳代は、しみじみ、永吉のことを想い、「あなたがおいしそうにご飯食べよる顔が見たいです」と夫婦愛を語る。それらを小さなカイロのように胸に抱えて、ひととき、じんわりそのあたたかさを感じているのかもしれない。
ただ、佳代が「米田家の呪いは解けない」これは「たたり」だと、「呪い」をアップデートしてしまうところは、『おむすび』らしい。制作統括・真鍋斎はあるとき、取材会で「呪い」は照れ隠しと言っていた。永吉の「ほら」も照れ隠し。聖人も、お金を受け取らないとき、父のモノマネをして見せる。それを見ていた結は、内心はうるっとしているのだろうけれど、それを全面的に顔に出さず、口元をちょっとだけ動かしてかすかに笑ったように見せるのみ。主要の登場人物がみんなストレートではないのである。
何がほらで、何が真実なのか、明確には線引しないで、ぼかしている米田家。気になるのは、永吉が第104話で、米田家の先祖が、糸島という名が付く前のこの地にたどりついたとき、この地の住民に親切にしてもらったことが、人助けするきっかけだと言っていたこと。米田家の先祖はどこから糸島にやって来たのだろう。ヒミコ(池畑慎之介)が長い旅をしているように、米田家の先祖も長い旅の果てにこの地に迎えいれてもらったのかもしれない。なんてことを想像すると、『おむすび』が驚くほどスケールの大きな物語に見えてくるのである。
宇佐川隆史チーフプロデューサーに聞いたところ、「この“ホラ話”には格別の意図はありませんが、糸島がコメの伝来地であるという説があり、永吉はそれに米田家の歴史をかけた“ホラ話”を結にしています」とのことだった。お米が大陸から渡ってきたように、米田家も実は大陸から渡ってきたのかもしれないし、大ボラかもしれない。
■放送情報
連続テレビ小説『おむすび』
NHK総合にて、毎週月曜から金曜8:00〜8:15放送/毎週月曜〜金曜12:45〜13:00再放送
BSプレミアムにて、毎週月曜から金曜7:30〜7:45放送/毎週土曜8:15〜9:30再放送
BS4Kにて、毎週月曜から金曜7:30〜7:45放送/毎週土曜10:15~11:30再放送
出演:橋本環奈、仲里依紗、北村有起哉、麻生久美子、宮崎美子、松平健、佐野勇斗、菅生新樹、松本怜生、中村守里、みりちゃむ、谷藤海咲、岡本夏美、田村芽実ほか
語り:リリー・フランキー
主題歌:B'z「イルミネーション」
脚本:根本ノンジ
制作統括:宇佐川隆史、真鍋斎
プロデューサー:管原浩
写真提供=NHK