『クジャクのダンス、誰が見た?』犯人候補6人を考察 手紙の偽装と東賀山事件冤罪が鍵?

 広瀬すず主演のTBS金曜ドラマ『クジャクのダンス、誰が見た?』は、浅見理都による人気漫画を実写ドラマ化したもの。原作は連載中ということで真犯人や結末が分かっていない状況だ。そこで、すでに放送された第2話の時点で怪しいとされる犯人候補を考察してみたい。

 主人公の大学生・山下心麦(広瀬すず)は、警察官の父・山下春生(リリー・フランキー)と2人暮らし。クリスマスイブの夜、2人は染田進(酒井敏也)が店主を務める馴染みの屋台ラーメン屋で食事をする。その後心麦は春生と別れ、大学サークルの飲み会から帰宅すると、自宅が炎上しており、春生は殺害されていた。

 春生の殺害犯として逮捕されたのが、春生が22年前に担当した「東賀山事件」の犯人で死刑囚となった遠藤力郎(酒向芳)の息子・遠藤友哉(成田凌)。事件を機に春生を恨んでの犯行とされ、春生の捜査一課時代の部下・赤沢正(藤本隆宏)が即逮捕。決め手は犯行時刻に現場近くの防犯カメラに友哉が映っていたことだった。

 春生の葬儀後、心麦はラーメン屋台の店主・染田から、殺される直前の春生が預けたとされる封筒を渡される。封筒の中には弁護士代300万円と手紙。「私が誰かに殺されたとして、以下に挙げる人物が逮捕されたとしたらその人は冤罪です。」と書かれた6人の中の“3番目”に遠藤友哉の名前があった。そして「もし名前を挙げた人が逮捕されたら下記の弁護士に頼んで弁護を依頼してください」という言葉通り、心麦は弁護士の松風義輝(松山ケンイチ)に依頼。ただ、松風は春生とは面識もなく最初は断るも、松風は友也との面会後に弁護を引き受けることを決める。

遠藤友哉(成田凌)

 まず、全ての起点となるのが「東賀山事件」。公式サイトでは「2002年7月7日、東賀山の住宅街で林川一家6人が殺害された事件。生後半年の次女のみが、別の部屋にいたため奇跡的に助かる。当時捜査一課の刑事だった春生と赤沢が遠藤力郎を逮捕し、その後死刑判決が確定している」とされている。死刑囚となった力郎は、近所に住んでいた庭師で事件の第一発見者。逮捕の決め手は犯人しか知り得ないことを供述したとされ、マスコミの飛ばし記事と警察の決めつけによる冤罪として描かれている(第2話で友哉が冤罪になる経緯が詳しく描かれていたので冤罪としておく)。ただ友哉が素直に捕まり、冤罪を訴えずに黙秘をしている理由は、松風が弁護士として来るのを待っていたのと、父親の冤罪を晴らす証拠を揃えるために、今回の事件を冤罪にすることで世論を味方につけ、父親の死刑判決の再審まで持っていくという考えがありそうだ。さながら長谷川博己主演ドラマ『アンチヒーロー』(TBS系)のような展開だ。

神井孝(磯村勇斗)

 怪しい雰囲気を漂わせる神井孝(磯村勇斗)に関しては、友哉が大事な資料を託していることから、東賀山事件の冤罪を追う記者として信頼している人物なので容疑者ではないだろう。しかし、心麦と春生が血が繋がっていないことにこだわり、心麦の伯母(春生の姉)・木村夏美(原日出子)とのDNA鑑定を独自に進め、心麦と夏美の血の繋がりが極めて低い結果、心麦と春生が実の親子でないことを証明する。心麦は東賀山事件で生き残った当時0歳の林川歌だと指摘した。

 出生を明かすことが冤罪とどう繋がるのか? 林川家の血縁関係が何やら関係してきそうだ。ただ、たしかに疑えることは平気で神井からのDNA鑑定に協力した伯母は金目当てなのか、心麦の敵なのかということ。

 さらに、友哉と春生が事件の数日前に新宿の喫茶店で出会っており、そこで友哉が春生を恫喝している姿が目撃されている。手紙は友哉が春生を脅して書かせたものだと赤沢は決めつけるが、心麦は「父は恫喝されて犯罪者の肩を持つほど弱くないです」と断言。

 おそらく春生は、自分が死刑に追い込んだ人物の息子が不憫な人生を歩んでいることを放っておけない性格のはずで、出所した友哉を気にかけて会っていても不思議ではなく、冤罪捜査に協力していたとも考える。もし2人が揉めていたとするなら、心麦の出生の秘密が冤罪を晴らす決定的な証拠だとして、春生はそれを断固拒否していたのだとしたらどうだろう。しかし、自分の死を予言していたことは何なのか? 2人が密会しているのを見られて真犯人に脅されていたのか。いずれにしろ、冤罪の証明、つまり警察の不祥事を暴露することになるので消されたと考えるのが無難か。

赤沢正(藤本隆宏)

 怪しい人物として描かれているのが赤沢。決めつけで行動する古いタイプの刑事で、おそらく冤罪なんて決して認めないタイプだろう。ただ、友哉に対しては純粋に犯人だと思っているのか、それとも東賀山事件について動いているのに気づいていたのか。春生が冤罪を明かそうとしたので力ずくで消したとも考えられる。

 しかしそれだと物語としてあまりにも単純すぎる。ただ気になるのが、心麦が赤沢家に訪れた際、妻・赤沢京子(西田尚美)が、事件や夫の言動にいちいち不穏な表情を見せ、春生が残した手紙について話すと夫婦がお互い視線を交わしていたこと。これは知られてはいけない事実や真相を知っている顔だ。

赤沢守(野村康太)

 そしてもう1人、息子で警察官の赤沢守(野村康太)が、小さい頃から心麦とは家族ぐるみの付き合いにも関わらず、父親が殺されたばかりの彼女の目の前で母親に「甘えさせてよ家族なんだし」と家族団欒を見せつけるのはあまりにもデリカシーがないのではないか。この家族はとにかく不穏な表情を見せ、誰かを庇っているようにも見える。それは父親の尊厳を守るために妻か息子が春生の口封じをしたのか、息子の行動を守っているのか、妻のなんらかの過去を隠すためか。心麦が林川歌だとしたら、同じ事件を担当した赤沢も知っているはずで、ここも何か関係してくるはず。少なくとも一番信用できるはずの赤沢一家の名前が手紙にないことが、春生にとって信用できない一家だという証明だと考えられる。

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