声優・小野賢章が『ハリー・ポッター』と歩んだ歴史 交代の危機を乗り越え、今なお続く縁

 今年も「ハリポタ祭り」の季節がやってくる。『金曜ロードショー』(日本テレビ系)では1月17日から31日にかけて、物語の壮大な結末を描く『ハリー・ポッターと謎のプリンス』『ハリー・ポッターと死の秘宝PART1』『ハリー・ポッターと死の秘宝PART2』が週替わりで放送される。

 この大人気シリーズを支えてきた重要な存在の一人が、日本語吹替版でハリー・ポッター役を務めた声優・小野賢章だ。オーディションで選ばれ、1999年に小学6年生で初めてハリーを演じた小野は、主演のダニエル・ラドクリフと同い年。当時の小野にとって、課題の1つが声変わりの時期だったとさまざまな媒体のインタビューで語っている。第3作目『ハリー・ポッターとアズカバンの囚人』の時期は「声変わりのタイミング次第ではハリー役の吹き替えを変えるかもしれない」(※)という話が持ち上がり、収録前にボイステストまで実施されたという。

『ハリー・ポッターと死の秘宝PART1』© 2010 Warner Bros. Entertainment Inc. All rights reserved.

 収録当時、中学生だった小野のユーモラスなエピソードもある。文化放送『Snow Man佐久間大介の待って、無理、しんどい、、』への出演時に明かされた話によると、ダニエル・ラドクリフと同い年ながら声変わりの時期が少しズレていた小野は、ハリー役を続けるため、スタッフの電話での確認に、意図的にやや声を低くして「最近ちょっと(自分の声も)低いっす」と報告したという。

 結果として主要キャストの声変わりは、作品に思わぬリアリティをもたらすことになったように思う。声優と役柄、そして視聴者本人やその家族が同じように年を重ねていくという稀有な体験は、『ハリー・ポッター』シリーズならではの魅力だからだ。ハリー、ハーマイオニー、そしてロンと共に青春時代を過ごした視聴者たちにとって、小野の声の成長は自分たちの成長と重なる特別な思い出となっているに違いない。そうでなくても、つい親戚の子どもが大きくなっていく姿を見守るような視点で見てしまう魅力があるのが本シリーズだろう。

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