ばいきんまんは理想の上司だった!? 映画『アンパンマン』から学べる“失敗”との向き合い方

 また個人的に最もワクワクさせられたのが、ばいきんまんがすいとるゾウを倒すためのメカを一から作る場面だ。資源が限られている中、ばいきんまんはルルンと協力して木製のロボット「ウッドだだんだん」を作り上げるのだが、本作は描き方が秀逸。「ジャーン!」と完成したところだけ見せるのではなく、まずはレンガの炉を作り、廃墟になったお城からかき集めた金属製品を溶かして工具を生み出し、木を加工する……というように工程をしっかりと描いている。作業に没頭しているときのばいきんまんは、寡黙な職人みたいでカッコいい。同時に、作業を通じてばいきんまんとルルンの心は少しずつ近づいていく。

 まさか自分の中で、ばいきんまんが上司にしたいキャラクター第1位になるとは思わなかった。ばいきんまんはルルンにできそうな仕事を与え、やり方を手取り足取り教えるのではなく、まずはやらせてみる。ルルンが何度失敗しても、怒りはするけれど、決して見放さない。なにより感動したのは、弱音を吐くルルンに自分の失敗談を聞かせるところ。人は誰でも失敗する。それをわかっていても、ついプライドが邪魔をして失敗を失敗と認められなかったり、他人に隠してしまったりするものだ。

 だけど、ばいきんまんは何度も失敗してきたことを堂々とルルンに明かす。それは、失敗を失敗で終わらせてきていないからだろう。アンパンマンにも幾度となく敗北しているが、その度に計画を練り直し、再び立ち向かってきた。そんな自分を誇りに思っているから、「どーだ、参ったか!」と開き直れるのだ。そんなばいきんまんの不屈の精神にきっと大人でも、いや大人だからこそ励まされるはず。同時に、怖がりで勇気が出ないルルンに多くを語るのではなく、自分の生き様で影響を与えるばいきんまんから、人を育てる上で大事なことを教わったような気がした。特に、他者に何かを教える立場についている人は参考になるのではないだろうか。

 もちろん、アンパンマンの見せ場もあり、ばいきんまんとラストで共闘するシーンには思わず胸が熱くなった。岡村隆史がゲスト声優を務めるすいとるゾウがまた強敵で、アンパンマンとばいきんまんのみならず、しょくぱんまんやカレーパンマンと力を合わせてもなかなか倒すことができず、最後までハラハラさせられる。一方、ルルンは上戸彩が演じており、とびきりキュートで癒されること間違いなし!

 しばらくアンパンマンから離れている人も、2023年に、絵本『アンパンマン』の誕生から50周年を迎え、今年春には連続テレビ小説『あんぱん』が始まるこのタイミングでもう一度触れてみてはいかがだろうか。

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©やなせたかし/フレーベル館・TMS・NTV ©やなせたかし/アンパンマン製作委員会 2024

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