『わたしの宝物』美羽、宏樹、冬月それぞれの選択 栞の存在が“帰ってくる場所”に

 一方で冬月は「あなたと美羽さんが時間をかけて愛情を注いできたから」栞があんなにかわいく元気に育ったと話していたが、一人だけ何も知らされず日本に帰国したら浦島太郎状態で、急に美羽に会うことさえ拒絶された冬月については、なんだかずっとずっと切なさが拭いきれないところがある。しかし、冬月にも幸せにしたいと思えるアフリカの子どもたちという存在ができて本当によかった。

 “不倫”であればあくまで大人同士の話ゆえに、必要以上にスキャンダラスに、あるいは神聖化しすぎた上で描かれたりもするが、“托卵”というテーマはさすがに難しい。大人の都合に巻き込まれ生み落とされた命が既にそこにあるわけで、本作でも大暴走を見せた真琴(恒松祐里)や水木(さとうほなみ)でさえも、あくまで不倫についての断罪にのみに留まっていた。そんな中、誰も“子ども”の存在を誰かに対するマウントの材料や関係性を繋ぎ止める理由にはしていなかった点は非常によかった。

 ただ、なかなかあそこまでのモラハラ男がいくら子どもができたことがきっかけとはいえ、カウンセリング通いもなしにあんなに相手を思いやれる献身夫に変貌を遂げることは現実的ではないと思えてしまうのも正直なところだ。しかしながら意地悪なツッコミなどいくらでも思い付けてしまう美羽と宏樹の選択や宝物について、周囲が何かをジャッジしたりとやかく言うことはお門違いで無粋だと改めて思わされた。

■配信情報
木曜劇場『わたしの宝物』
TVer、FODにて配信中
出演:松本若菜、田中圭、深澤辰哉、さとうほなみ、恒松祐里、多岐川裕美、北村一輝
脚本:市川貴幸
主題歌:野田愛実「明日」(avex trax)
演出:三橋利行(FILM)
プロデュース:三竿玲子
制作・著作:フジテレビ
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