治安最悪なメキシコの教育現場から学ぶ 『型破りな教室』が描く”埋もれた才能”の活かし方

 彼は、国内で100年続く「カリキュラム通り、教科書に載っている情報を“大人が教える”」という教育指針を徹底的に無視し、「身近な体験を通して“子どもに考えさせる”」という型破りなアプローチを取る。彼の授業を通じて、忙しい両親の代わりに家事をする3姉弟の長女・ルペは哲学に興味を抱き、ギャングの兄を持つ少年・ニコはクラスのムードメーカーになり、貧困家庭で育ち「消極的な生徒」としか認識されていなかった少女・パロマは類まれな才能を開花させていく。しかし、やがてフアレスと生徒たちを悲劇が襲う……。

 ホセ・ウルビナ・ロペス小学校の生徒のような人たちはきっと世界中のどこにでもいるだろう。もしかしたら、そこかしこに“埋もれた天才”はいるのかもしれない。しかし、彼ら・彼女を活かすには、その能力を見出す者のみならず、その価値を理解して支える人間も不可欠だ。メインキャラクターたちの結末を見て、そう痛感する。エンタメ業界の片隅に身を置く人間として、編集という仕事をする人間として、芽を出そうとする才能や可能性を守っていかなければと思わされた。

■公開情報
『型破りな教室』
ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館ほかにて公開中
出演:エウヘニオ・デルベス、ダニエル・ハダッド、ジェニファー・トレホ
監督・脚本:クリストファー・ザラ
配給:アット エンタテインメント
2023年/メキシコ/スペイン語/125分/カラー/シネスコサイズ/原題:Radical/PG-12
©Pantelion 2.0, LLC
公式サイト:katayaburiclass.com 
公式X(旧Twitter):@katayaburiclass
公式Instagram:@katayaburiclass

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