髙石あかり、朝ドラ出演後のキャリアは? 代表作となった『ベビわる』シリーズでの功績

 その活動のごくごく初期段階から、「目標はNHK朝ドラと大河の主演」と言い続けていた髙石あかりが、遂に朝ドラのヒロインに決まった。大変めでたい。我がことのように嬉しい。お祝いに寿司でも取ろうかと思ったところで、我に返った。

「朝ドラヒロインになってしまったら、もう『ベイビーわるきゅーれ』には出てくれないのではなかろうか……」

 『ベイビーわるきゅーれ』(2021年)とは、言わずと知れた髙石あかりの出世作。女の子殺し屋コンビ・杉本ちさと(髙石あかり)と深川まひろ(伊澤彩織)の、「ゆるい日常」と「ハードな殺し」のギャップが素晴らしい傑作だ。この1作目を観たときは、「女性アクション映画の最高峰」だと思った。だがこの作品はシリーズ化され、『ベイビーわるきゅーれ 2ベイビー』(2023年、以下『2ベイビー』)、『ベイビーわるきゅーれ ナイスデイズ』(2024年、以下『ナイスデイズ』)、ドラマ『ベイビーわるきゅーれ エブリデイ!』(2024年/テレビ東京系列、以下『エブリデイ!』)と、作を重ねるごとに「最高峰」を更新し続けているのだ。

 まひろを演じる伊澤彩織は、『ジョン・ウィック:コンセクエンス』(2023年)にも参加した、世界的なスタント・パフォーマーである。その小柄な体躯をフルに活かした、小回りのよく利いた立ち回り。ピーカブー・スタイルに構えて頭を振りながら突進するさまは、言わば“女マイク・タイソン”である。古今東西問わずこれだけ説得力のある動きができる女性アクション俳優は、非常に稀有な存在だ。

 対する髙石あかりは、もともとアクション畑ではない。ダンスボーカルグループ育成ユニットa-X’s(アクロス)の出身だ。当然身体能力は高いだろうが、“殺陣”となると別問題だ。だが彼女は、本来の彼女の10倍は動けるであろう伊澤彩織との共闘シーンでも、まったく見劣りしない。もちろん、撮り方や見せ方の妙もあるだろう。だが、彼女をまひろに引けを取らない凄腕の殺し屋に見せている点は、その目と佇まいだ。

 どちらかと言うとまひろは、日常のテンションからヌルッと殺し屋モードに移行するタイプである。その境目がわかりにくい。そもそも境目がないのかもしれない。一方ちさとは、普段のだるふわな雰囲気から180度変わる。座った、深く冷たい目に変わる。銃の構え方にも余裕があり、コンビの精神的支柱であるようにも見える。

 事実、たまに精神的脆さを見せることのあるまひろの背中を押すのも、ちさとの役目だ。まひろは、ターゲットに情を抱きやすい。潜入捜査官的なミッションを受け持った『エブリデイ!』第2話では、いざ殺す段になってから「いい人たちだったなぁ……」と感傷的になる。ちさとは、そんなまひろの感傷を優しく受け止めながらも、プロとしての任務を遂行させる。

 コミュ障気味のまひろは、強いターゲットと戦いを通じて心を通わせてしまう。『2ベイビー』の神村ゆうり(丞威)、『ナイスデイズ』の冬村かえで(池松壮亮)らとは、楽しそうに笑みを浮かべながら戦っている。「敵として出会わなければ、いい友達になったんだろうな」と感傷気味に語る。だからこそ、“一緒に”とどめを刺してくれる、ちさとの存在が必要なのだ。事実まひろは、ちさと抜きの殺し(『エブリデイ!』第11話)において、ターゲットの日野彰(柄本時生)を殺したふりして逃がしている。

 『ナイスデイズ』において、冬村かえでのあまりの強さに気弱になるまひろが、「向こうで待ってるからさ。向こうでも遊んでほしいな……」とこぼす。それを受けたちさとの「そんな約束、私はしないよ」からの「今日は溶けるくらい甘やかしてやるよ」の流れが、男前すぎる。戦闘力は極めて高いまひろだが、もしちさとと出会わなければ、とっくに命を落としていたのではないだろうか。

 先述の通り、この『ベイビーわるきゅーれ』シリーズは、作品を追うごとに「最高峰」を更新し続けている。先日放送された『エブリデイ!』第11話の衝撃は、今でも思い出すと震える。

 2人が所属する殺し屋協会のジョブローテーション制度に基づき、まひろは内部監査部へ、ちさとは営業部に配属される。その営業部「オフィス向日葵」は「お疲れ様です」を「お元気様です」と言い換えるような、嫌な感じにポジティブかつ、根はブラック体質なチームだった。仕事の取れないちさとは、先輩社員たちの陰湿ないじめにあう。

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