『無能の鷹』は“説教臭くないお仕事コメディー” 原作との比較でみえる根本ノンジの脚本力
原作の、鷹野を中心にモノローグ主体で展開される、どこかシュールな空気感が好みの人からすると、ドラマ版は雰囲気が異なり、原作のエピソードがあっさり扱われているという印象を持つかもしれない。一方で、ドラマが描いているようなさまざまな立場の働く人の苦悩も、原作の魅力の一つであることには違いない。今回の実写化は、そのエッセンスを抽出し膨らませ、より見応えが出るように調整が加えられたものと受け取れる。これはひとえに、原作ものドラマを数多く手がけてきた根本ノンジの脚本力によるもの。原作のなかにある“働く人の悲喜こもごも”といういまドラマ化すべき要素を取り出し、脚色して連続ドラマとして成り立たせたことで、鷹野のキャラを中心としたコメディーではなく、“ゆるいお仕事コメディー”としての魅力が際立ったのだ。
漫画やドラマの楽しみ方に正解はない。その作品のどこに魅力を感じるのかは人それぞれで、だからこそ実写化に対しての評価も分かれる。一方で、実写化がその作品への入り口にもなることも事実。原作をそのまま忠実に実写化するよりも、ある一点を際立たせた方が、原作の魅力がより伝わることもある。『無能の鷹』はそういった点で、実写化の成功例の一つということができるだろう。
ちなみに、TELASAではスピンオフとして原作の人気エピソードを実写化。原作のシュールな雰囲気、鷹野と鶸田(塩野瑛久)のバディの活躍が見たいという人は、こちらに手を出してみるのもいいかもしれない。
■放送情報
『無能の鷹』
テレビ朝日系にて、毎週金曜23:15〜0:15放送
出演:菜々緒、塩野瑛久、井浦新、工藤阿須加、さとうほなみ、高橋克実ほか
原作:はんざき朝未『無能の鷹』(講談社「Kiss」連載)
脚本:根本ノンジ
音楽:鈴木真人
演出:村尾嘉昭、棚澤孝義、高橋由妃
エグゼクティブプロデューサー:内山聖子(テレビ朝日)
プロデューサー:貴島彩理 (テレビ朝日)、本郷達也(MMJ)
制作著作:テレビ朝日、MMJ
©︎テレビ朝日
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