『宙わたる教室』小林虎之介の“火星を作る”が新たな目標に 前例のない挑戦が未来を作る
前例のない挑戦には、否定の声や嘲笑がつきまとう。その逆風にどう立ち向かっていくかというヒントを与えてくれた『宙わたる教室』(NHK総合)第5話。東新宿高校定時制科学部のメンバーが、学会発表という大きな目標に向かって進み始める。
岳人(小林虎之介)、アンジェラ(ガウ)、佳純(伊東蒼)、長嶺(イッセー尾形)の4人で正式に発足した科学部。彼らは顧問である藤竹(窪田正孝)の提案で、「日本地球惑星科学会2025年大会」の高校生セッションに参加することになった。会場で口頭発表するためには研究の概要を提出し、選抜をくぐり抜ける必要がある。
まずはテーマを決めるにあたって、文科省からサイエンスエリートの認定を受けた名門・明葉学院で行われる「関東高校生科学研究コンクール」の入賞校による発表会を見学することに。だが、あまりのレベルの高さに圧倒されるばかりで何の参考も得られなかった岳人たち。佳純はその夜、明葉学院に通う姉・円佳(伊礼姫奈)から「どうせ新しいこと始めたって、またすぐ諦めるんだし」と言われる。
佳純だって、昼間の高校に通うことも教室で勉強することも諦めたくて諦めたわけじゃない。それは他の部員たちも同じだ。それぞれに自己責任と断罪することのできない事情がある。だけど、仕方ないと自分を納得させ続けるだけの人生は苦しい。ようやく自然と足が向かう場所を見つけられた佳純も、諦める理由を探すのはもうやめにしたかった。
彼女の思いを受け、科学部は予行として見学したコンクールへの出場を決意。4人のアイデアと知識を持ち寄って、隕石の衝突でできたクレーターの内部構造を可視化する実験のレポートを完成させた。しかし、大会本部は「定時制高校参加の前例がない」としてエントリーを弾き、普段は冷静な藤竹が「そんなの理由にならない!」と初めて声を荒げる。予算も道具も限られている中で、工夫しながら懸命に研究に取り組んできた部員たちを一番近くで見てきたからこその怒りであり、それだけ藤竹も先生としての自覚が芽生えてきたということだろう。
一方で、科学者としての憤りもあるのではないだろうか。「世の中、そういうもんだろ」と吐き捨てる大学同期の相澤(中村蒼)に、「本当にそう思うか?」とまっすぐな目を向ける藤竹。その問いに相澤は一瞬たじろぐ。科学は今回のように、前例がないという理由で初めは突っぱねられたであろう多くの挑戦によって発展してきた。そして、そうした挑戦の根底には、「知りたい」という根源的な欲求がある。本来、その欲求を満たしてくれるはずの学問である科学が、定時制という理由だけで中身も見ずに門戸を閉ざすのかという憤りが藤竹の問いには感じられた。