社会派×アクションの傑作! 南インドの星・ヴィジャイ主演『カッティ 刃物と水道管』は必見

主人公カッコよすぎ! “ジョン・ウィックばりのアクションをするルパン”

 しかし、本作の最大の魅力はなんといっても主人公カディルそのものである。脱獄はするものの、嘘をつかずに看守に協力をしたり、老人が叩かれたり村が悲惨な目に遭っていることを知るとブチギレたりする姿勢がめちゃくちゃいい。詐欺師・盗人ではありながら、ある程度のモラルを持っていて男前で困っている人のヒーローになる姿は、まるで怪盗ルパン三世のよう。そんなの誰もが好きになっちゃうやつじゃん!

 そして何より強い。カディルの異名“カッティ(Kaththi)”とは「刃物」を意味するのだが、その名前に負けないくらい彼は強い。劇中、脱獄が得意な彼がどれほどの戦闘スキルを持ち合わせているのか不明なまま話が進み、演じるヴィジャイも割と普通体型に近く、ゴリゴリに筋肉を全面的に出す“屈強さ”のようなものは感じられないのがいいミスリードになっている。しかし、カディルの真の強さがわかるシーン……老人を殴ったチンピラを床に薙ぎ倒し、地面に伏せた顔を足で思い切り踏み潰す様子(そしてスローモーションで飛び散る血飛沫!)は圧巻なので心して観てほしい。それだけでなく、彼の機転の良さが伺える“コイン戦法”も必見で、アクション映画としても十分に見どころ満載なのがこの映画の素晴らしいところだ。

 大企業の横暴に対し、善良なジーヴァにはない発想で戦っていくカディル。戦いに備える上での準備の良さや俊敏で無駄のない動き、びっくりする腕力と体力はジョン・ウィックを彷彿とさせるものがあり、やはり好きにならざるを得ない魅力的な主人公なのだ。そんな彼を演じたヴィジャイが南インドの大スターと言われるのも納得の作品。実際、彼にとっても今作はキャリアの起点となり、以降は同じように社会問題を取り込んだ脚本を選ぶようになったという。大企業の発展のために一般市民の生活が圧迫されるというテーマ性は、国を問わず多くの観客に刺さるはず。悲惨さに共鳴し、共感できるがゆえに味わえる映画のカタルシス、そして男前すぎるカディルの運命の受け入れ方……ぜひ大画面で堪能してほしい。

■公開情報
『カッティ 刃物と水道管』
11月1日(金)より、新宿ピカデリーほかにて全国順次公開
出演:ヴィジャイ、サマンタ、ニール・ニティン・ムケーシュ、サティーシュ
監督・脚本:A・R・ムルガダース
撮影:ジョージ・C・ウィリアムズ
音楽:アニルド
編集:A・シュリーカル・プラサード
製作会社:ライカ・プロダクションズ
配給:SPACEBOX
原題:Kaththi/2014年/タミル語/163分
©Lyca Productions

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