『ONE PIECE』の世界に『FILM RED』がもたらした新時代 映画とTVアニメがひとつなぎに

 劇場版『ONE PIECE』の第15作目となる『ONE PIECE FILM RED』(以下、『FILM RED』)が10月13日にフジテレビ系で地上波初放送。アンコール上映も含めた興行収入は203億円と歴代の劇場版で最高を記録し、全世界では319億円に到達して『ONE PIECE』の世界的な人気ぶりを証明した。それだけではない。『FILM RED』のストーリーは『ONE PIECE』という長大で壮大な物語にも“新時代”をもたらした。

 「そんなに怖いか? 『新時代』が!!!」。2023年11月5日放送のTVアニメ『ONE PIECE』の第1082話「新時代到来!赤髪の皇帝の怒り」で、赤髪のシャンクスが凄みをきかせるようにしてこの言葉を発したことが、当時話題となった。劇場版『FILM RED』に登場するウタという歌姫が唄い、映画のオープニングテーマにもなった「新時代」と同じだったからだ。

 放送日を挟んで、劇場では『FILM RED』のアンコール上映が行われていただけに、TVアニメと連動して人気を盛り上げようとする意識があったのかもしれない。原作の漫画でも、8月6日の『FILM RED』公開を目前にした8月1日発売の『週刊少年ジャンプ』に第1055話「新時代」として掲載され、劇場版への興味を誘っていた。

 劇場版とTVアニメの両方からアニメ『ONE PIECE』を盛り上げるため、キャッチフレーズ的な言葉として使ったに過ぎない。そうした見方もできない訳ではないが、一方で、『ONE PIECE』という作品には、漫画はもちろんアニメのほうも、原作者の尾田栄一郎が考えていることを外れて、独自の設定を盛り込もうとはしてない感じがある。従って、「新時代」という言葉も確実に意味があるものとして使っているといった想像も浮かぶ。

 その象徴として、『FILM RED』という作品があるといった見方もできる。果たして本作は、どのような内容なのか?

 圧倒的な歌声でじわじわと人気を獲得してきたウタという歌手が、ずっと隠していたその姿を大勢の前に現して、初めてのライブをすることになった。場所は音楽の島「エレジア」。誰もがウタの姿を見てその歌声を耳にしたいと思いライブ会場にかけつけた。その中にはルフィを始めとする麦わらの一味もいた。

 そして始まったウタのライブはとてつもなく、麦わらの一味も含む観客たちを魅了した。ところが、1曲目が終わると突然、ルフィがウタのところに駆け寄って声をかけ、ウタのほうもそんなルフィに答えて観客たちを驚かせた。実はウタはルフィとは古くからの知り合いで、幼いルフィが暮らしていたフーシャ村によく来ていた海賊、赤髪のシャンクスの娘だった。

 あのシャンクスに娘がいた! ライブ会場の観客だけでなく中継を見ていた全世界の誰もが驚いた。世界貴族の頂点に君臨する五老星たちまで驚いたのだからその衝撃度の高さもうかがえる。観客にしてみれば、海賊に苦しめられている暮らしを、歌声で癒してほしいといった思いからウタを応援していただけに、そのウタがこともあろうに四皇のひとりとして恐れられるシャンクスの娘で、売り出し中の海賊ルフィの知り合いというのは信じがたいことだっただろう。

 そこでウタは、海賊を敵視するような発言を続け、ルフィにも海賊なんて辞めてしまえと誘いかける。もちろん断るルフィ。そこからウタの“本性”が明らかとなり、彼女がいったい何を目的にしてライブを開催したのかが見えてきて、ルフィと麦わらの一味だけでなく、海賊のトラファルガー・ローや四皇ビッグマムの子供たち、そして海軍をも巻き込んだ壮絶なバトルへと突き進んでいく。

 ウタの歌唱パートを担当したAdoによる、リズミカルだったりビートが効いていたりメロディアスだったりと多彩な楽曲が次々に繰り出され、ルフィたちによる迫力のバトルが繰り広げられる展開には誰もが引き込まれる。ルフィと共闘するように、シャンクスが手に剣を持って切り込んでいくシーンもあって、それまで覇気を放って戦わずして敵を圧倒するシーンが多かったシャンクスが、いよいよ本領を見せてくれるのかといった興味を誘った。

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