『虎に翼』“出る杭”だった寅子が理想の上司に よねにしか言えない辛辣で優しい言葉

 『虎に翼』(NHK総合)第124話が9月19日に放送された。駅の階段から同級生を突き落とした並木美雪(片岡凜)は不処分となった。同級生が意地悪をしようとして、自分の手帳を奪って逃げた、という美雪の供述に反論の余地はなかった。美佐江(片岡凜)と瓜二つの美雪に、寅子(伊藤沙莉)は不安を感じたに違いない。「なぜ人を殺してはいけないのか」という美佐江の問いに、寅子は答えを出せていなかった。

 第124話では、悩みの渦中にいる若者に寄り添う姿が印象的だった。意見したことを「出すぎた発言」と詫びる音羽(円井わん)に、寅子は「萎縮したりせずに思ったことを言ってくれてありがとう」と感謝する。“出る杭”の側だった寅子は、理想の上司になっていた。尊属殺人罪で最高裁に上告中の美位子(石橋菜津美)は、山田轟法律事務所に居候している。これからもここにいたい、とつぶやいた美位子によね(土居志央梨)がかけた言葉はある意味、辛辣なものだった。

「それが私たちのもとに来る依頼人の話を盗み聞きしたりするためならやめろ。人を見て安堵したり、自分の身に起きたことと比較したりするのはやめろ。何か抱えてるやつはどっかしら生きるために無理してる。どうってことないふりをしてごまかさないと、やっていけないことがある。(中略)お前の身に起きたことは、はらわたが煮えくり返るほどクソだ。(中略)でも、それはお前の父親が、この世界が、法律がどうしようもなくクソなだけだ。お前がかわいそうなわけでも、不幸で弱いわけでも決してない」

 よね以外に発することのできない言葉である。他人の不幸を見て安心するな。仮に悲惨な境遇にあったとしても、そのことであなた自身の価値は少しも損なわれない。あなたは強くて、立派で、素晴らしい人間だと、よねは伝えたかったのではないか。それは、地獄のような人生を歩んだよねが、自身に言い聞かせた言葉だったかもしれない。

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