池田朱那、松澤匠、石橋菜津美 『虎に翼』終盤も適材適所のキャスティングに

斧ヶ岳美位子(石橋菜津美)

 第117話の冒頭で描かれた、ある女性が父親を殺害してしまった事件。尊属殺人罪自体を問い直すきっかけの事件の加害者として、斧ヶ岳美位子はよねと轟に弁護を依頼する。美位子は起訴されたのち一時釈放され、山田轟弁護士事務所で手伝いをしている。一審では減刑された判決が下ったが、すぐに検察側から控訴された。

『虎に翼』石橋菜津美の“冷たいまなざし”が胸を打つ 裁判官の“一人の人間”としての葛藤

『虎に翼』(NHK総合)第118話では、女性法曹の会の集まりに始まり、久しぶりに星家を訪れた朋一(井上祐貴)が不満を口にした最高…

 実の父親から長きに渡り性的虐待を受け、最後には父親を殺してしまうという壮絶な生い立ちながら、どこかあっけらかんとした態度を見せる美位子。むしろそうした態度でいなければ、精神が保てないという状況に近いのかもしれない。弁護費用を心配する母親に対して「1人で逃げた」という言葉を冷静に投げた姿や、第118話でもインサートされた殺害時の状況を見るに、彼女の孤独の深さは相当なものだろう。

 『虎に翼』が最後に描く“法の下の平等”を表す最も重要な人物の美位子を演じるのは、石橋菜津美だ。『大豆田とわ子と三人の元夫』(カンテレ・フジテレビ系)では、素性を隠して慎森(岡田将生)に近づく小谷翼役を演じており、石橋は本心を隠して飄々とした態度を見せる芝居が抜群にうまい。おぞましい性的虐待の被害にあいながらも、表面上は普通を装わざるを得ない美位子を演じる俳優として、ベストキャスティングといえるだろう。

 かつて穂高(小林薫)らが違憲としながらも合憲という判決が下った尊属殺人重罰規定に対して、よねと轟が弁護士として、桂場が最高裁判所長官として関わることになる最終章。穂高が成し得なかった違憲判決が下る“雨垂れ石を穿つ”瞬間を身を引き締めて見届けたい。

■放送情報
NHK連続テレビ小説『虎に翼』
総合:毎週月曜〜金曜8:00〜8:15、(再放送)毎週月曜〜金曜12:45〜13:00
BSプレミアム:毎週月曜〜金曜7:30〜7:45、(再放送)毎週土曜8:15〜9:30
BS4K:毎週月曜〜金曜7:30〜7:45、(再放送)毎週土曜10:15~11:30
出演:伊藤沙莉、岡田将生、石田ゆり子、森田望智、土居志央梨、ハ・ヨンス、戸塚純貴、高橋努、平埜生成、塚地武雅、趙珉和、三山凌輝、川床明日香、円井わん、青山凌大、今井悠貴、菊池和澄、井上祐貴、尾碕真花、池田朱那、平田満、余貴美子、沢村一樹、滝藤賢一、松山ケンイチ
作:吉田恵里香
語り:尾野真千子
音楽:森優太
主題歌:米津玄師「さよーならまたいつか!」
法律考証:村上一博
制作統括:尾崎裕和
プロデューサー:石澤かおる
取材:清永聡
演出:梛川善郎、安藤大佑、橋本万葉ほか
写真提供=NHK

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