『エイリアン:ロムルス』は誰もが楽しめる! “往年の名作の続編”の中でも突出した完成度
『エイリアン:ロムルス』(2024年)は、祖父母の家や実家で無限に出てくる唐揚げのような大満足の1本である。唐揚げは基本的に美味い。ナンボでも食べられる料理の一つだ。私も少年の頃に、無限に出てくる唐揚げには非常にお世話になった。それくらい『エイリアン:ロムルス』は誰もが楽しめる映画である。
そして、この映画はただ美味い唐揚げなのではなく、唐揚げを出す実家の両親や祖父母の気持ちまでも体感できるのだ。エイリアンのファンの中には、これが最初のエイリアンとの遭遇になる人を羨ましく思い、「もっとドンドン見んしゃい」と、無限唐揚げを作る側の気持ちになるだろう。実家の話でなくても、よくテレビでベテランの芸人さんなんかが「歳をとると若い人が食べているのを見るだけで楽しい」と言っているのを見かけるが、私は本作で初めてその気持ちが分かった。この映画はエイリアンのファンはもちろん、エイリアンを知らない人にも……いや、むしろエイリアンに触れたことがない人にこそ、全力でオススメしたい。そして皆さんの感想が気になります!
本作のあらすじはこうだ。映画史上屈指のブラック企業ことウェイランド・ユタニ社。同社が管理する辺境の惑星で、とある若者たちが過酷な労働に従事していた。労災で死人は出まくり、ノルマは理不尽に増え続け、おまけに惑星は常に厚い雲に覆われていて日照時間は年間ゼロ。最悪の環境で働いていると、ある若者が宇宙空間に漂流する船を見つける。その船の積み荷を盗めば、良い環境の星に移動できるかもしれない。「このままジャパニーズKAROSHIは嫌だ!」。そう思い立った若者たちは、宇宙へ飛び出した。しかし、いざ目的の船についてみると、どうにも様子がおかしい。ただの宇宙船ではなく、何かを研究する施設だったようだ。目的の積み荷を探す若者たちだが、そこに宇宙最凶の生物が忍び寄る……!
すでに各所で指摘されているように、大枠のストーリーはフェデ・アルバレス監督が過去に手掛けた『ドント・ブリーズ』(2016年)に近い。そして、このアルバレス監督の鉄板レシピに乗せて、彼の驚異的なエイリアン愛とホラー作家としての手腕が炸裂。本作は『エイリアン』(1979年)から『エイリアン:コヴェナント』(2017年)まで、『エイリアン』シリーズすべての要素を丁寧に拾い上げ、なおかつ新鮮な作品に仕上がっている。
本作はオープニングから並々ならぬ気合を見せる。『エイリアン』の時代の、70年代末期のSF感あふれる小道具を大々的に見せてくれるのだ。あちこち角ばって、ボタンがいっぱいある機械、画質の荒いモニター画面、最近は見ないデザインの防護服。こういったガジェットを今の映像技術で撮っているのだが、これがまず非常に新鮮だ。そして『エイリアン』よろしく、ウェイランド・ユタニ社の極悪非道のブラック企業っぷりを、どこか『エイリアン3』(1992年)の監獄を思わせる鬱屈と閉塞感しかない惑星を通じて描きつつ、いざエイリアンが登場すると、『ドント・ブリーズ』シリーズなどで積み上げた、アルバレス監督の「ルール厳守スリラー」の演出が冴えわたる。
『ドント・ブリーズ』は、音を出したら殺人老人に殺される映画だったが、本作にもそういった「〇〇したら即死」な場面が頻出。主人公らは危険すぎる道を通っての「おつかい」をやらされるのだが、そこには常に「この通りにすれば大丈夫(かもしれない)」というルールが存在し、ゲーム的な面白さが常にある。