水野美紀、『ビリオン×スクール』の堂々たる校長像 ヒール役でも隠しきれない“上品さ”

 ドラマ『ビリオン×スクール』(フジテレビ系)の「VS校長編」もいよいよクライマックスを迎える。

 本作は、日本一の財閥系企業のトップであり“億万長者=ビリオネア”の主人公・加賀美零(山田涼介)が、身分を隠して学校の教師となり、秘書兼ボディーガード/副担任の芹沢一花(木南晴夏)とともにさまざまな問題に直面しながらも生徒とともに成長していく姿を描いた学園コメディーだ。

 第6話から海外から帰国した絵都学園の校長・東堂真紀子(水野美紀)が学園に復帰し、あの手この手を使って加賀美を学園から追い出そうとする。第8話では東堂からスポーツ大会で全競技最下位なら加賀美をクビにするという宣告を受け、加賀美は元陸上部のエースだった城島佑(奥野壮)らを集め、見事勝利を収めた。

 その中で、加賀美の過去を知る重要人物として描かれているのが、水野美紀演じる東堂だ。容姿端麗かつ物腰も柔らかで生徒や教師陣からの信頼も厚いという点では教師として鑑のような存在ではあるが、時折見せる冷徹な一面からは裏も感じさせる。第6話までは長期海外赴任中で、教頭らに学校の運営を任せていた関係で、出番はスポットでの出演となっていたが、第7話からは「VS校長編」として加賀美の前に立ちふさがる。

 学園にはびこる問題を徹底的にリアルに描く一方で、加賀美と副担任・芹沢とのやりとりを始め、職員室での光井ひかる(志田未来)、溝口信雄(坂口涼太郎)、土橋淳平(永野宗典)、堺宮子(MEGUMI)らのまるで漫才のような掛け合いが見どころの本作。そこで東堂は、いわゆるヒール役として描かれる。

 第6話では職員室に現れた東堂が嫌味のように学園の問題を口に出し始め、最後に苦笑を浮かべると、これまで和やかだった職員室のムードが一変。水野のキリッとした佇まいと芯のある演技は作品を引き締める役割を担っているように思う。かといって、完全にヒール役に徹することはなく、生徒への思いやりもしっかりと持っており、絶妙な塩梅で演じていることもあってまったく嫌味ったらしさを感じさせない。

 『合理的にあり得ない~探偵・上水流涼子の解明~』(2023年/カンテレ・フジテレビ系)では悪女ぶりを発揮する一方で、『星降る夜に』(2023年/テレビ朝日系)では、明るく陽気で周囲を巻き込む社長を演じるなど、作品に応じてさまざまな役を演じてきた水野。主役級の役を演じているわけではないのにもかかわらず、それに匹敵するほどのインパクトをどの作品でも残しており、水野の存在は欠かせないものになっている。水野ほど、存在感のあるバイプレイヤーは他にはいないだろう。

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