『虎に翼』名村辰のらしさが詰まった名台詞 男・女ではなく“1人”のために考えるべきこと

 一方で、秋山(渡邉美穂)の言葉もまた、胸に刺さる。勉強会の後、秋山は寅子の前で「平等なわけないです」「男と女のつらさをひとくくりにされたくない」と口にした。秋山は子供を授かっていた。母になることに、うれしい気持ちはあるが、自分で切り開いた道を自分で閉ざさなければいけない現状に、秋山は苦しんでいたのだ。寅子もまた、秋山にかつての自分を重ね、寄り添う。

 秋山、そして後輩たちを守るために寅子は行動を起こす。「育児期間の勤務時間短縮」「育児のための長期休暇取得」という寅子の提案に、桂場(松山ケンイチ)が「時期尚早」といって立ちはだかるが、寅子はそう簡単には引かない。劇中では、桂場もまた過去を振り返る。第38話では、寅子が今の秋山同様、子供を授かったことをきっかけに“地獄”を見て、穂高(小林薫)と決別する。あの場面には続きがあり、桂場が穂高に苦言を呈していたことが明かされた。

 寅子は女性にも開かれた法曹界にするため、仲間たちに協力を仰ぐ。第108話は、そんな寅子の前に、久藤(沢村一樹)と桂場が現れて幕引きとなった。ここでは女性法曹の話題が主軸になっているが、物語前半で描かれた小橋と秋山からも分かるとおり、本作は「女性は」「男性は」と一括りにすることはできないことも語る。小橋も寅子も桂場も、かつての自分と目の前にいる後輩たちを重ね、これからの世代のために、「男」とか「女」とかではなく1人1人のために、自分たちが通ってきた道の“舗装”を行っている。明日の桂場の発言が気になるところだ。

■放送情報
NHK連続テレビ小説『虎に翼』
総合:毎週月曜〜金曜8:00〜8:15、(再放送)毎週月曜〜金曜12:45〜13:00
BSプレミアム:毎週月曜〜金曜7:30〜7:45、(再放送)毎週土曜8:15〜9:30
BS4K:毎週月曜〜金曜7:30〜7:45、(再放送)毎週土曜10:15~11:30
出演:伊藤沙莉、石田ゆり子、岡部たかし、仲野太賀、森田望智、上川周作、土居志央梨、桜井ユキ、平岩紙、ハ・ヨンス、岩田剛典、戸塚純貴、松山ケンイチ、小林薫
作:吉田恵里香
語り:尾野真千子
音楽:森優太
主題歌:米津玄師「さよーならまたいつか!」
法律考証:村上一博
制作統括:尾崎裕和
プロデューサー:石澤かおる
取材:清永聡
演出:梛川善郎、安藤大佑、橋本万葉ほか
写真提供=NHK

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