『笑うマトリョーシカ』高岡早紀が作り出す“間”の意味深さ 衝撃だらけの第9話を整理する

 清家と浩子の思い出の地である外泊(そとどまり)で、浩子は自身の家族の歴史を語り始める。浩子の母は戦時中、満州国で日本の貿易商と結婚して日本にやってきた中国人女性だった。しかし、夫の両親に認められず、最終的には夫にも見捨てられ、異国の地で孤立無援の状態に陥る。生きるために水商売で働く中で、ある男性から関係を強要され、その結果として生まれたのが浩子だった。

 このような複雑な背景を持つ母親のもとで育った浩子は、自らを守るために教養を身につけながらも、人生に対する虚無感を抱えていた。そんな彼女の人生に転機をもたらしたのが、代議士の和田島(加藤雅也)との出会いだった。しかし、浩子の鋭い洞察力は、和田島もまた母親に操られた主体性のない男であることを見抜いていた。

 浩子は、自身の複雑な過去を和田島に打ち明けた。彼女は和田島を巧みに操り、この国への復讐を成し遂げようとしていた。その計画の最中、浩子は一郎を身籠る。しかし、当時の社会情勢を踏まえ、半分中国人である自分の結婚に対する社会の目を恐れた浩子は、妊娠を告げずに和田島と別れることを選択した。

 その後、浩子が結婚したのは清家義和だった。彼は浩子が銀座のクラブで働いていた頃の常連客で、優しい男性に見えた。しかし、その優しさはわずか半年ほどで消え失せ、一郎の実の父親への嫉妬に駆られた義和は、家庭内暴力を振るうようになる。追い詰められた浩子は、再び和田島に助けを求めた。そして、和田島の手引きにより、義和は「事故」で命を落とすこととなった。

 浩子の告白を聞いた道上は、これまでの調査結果と照らし合わせながら、複雑に絡み合った人間関係と事件の全貌が見えてきたと感じていた。しかし、浩子は冷静な表情で道上を見つめ、こう言い放つ。

「ここまでよく調べたわね。でも肝心なところにはたどり着けていない」

 さらに、ハヌッセンにまつわる論文を送ったのが浩子ではなかったという衝撃の事実が、誰が、そしてなぜ清家の論文を送ったのかという新たな疑問を投げかける。答えを口にしながらも核心では何かを隠しているような彼女の言葉の端々に、道上と一緒に固唾を飲んだ第9話。高岡早紀が作り出す“間(ま)”の意味深さに、多くの視聴者が思わず考え込んでしまったことだろう。

 冷徹さの中に垣間見える人間味、強さの奥に潜む狡猾さ、そしてそれらを巧みに操る知性。これらすべてを、浩子は一郎に託しているのかもしれない。だがその向こう側からも、さらなる操り手の存在を示唆する不穏な足音が、静かにしかし確実に近づいているような予感がする。

■放送情報
金曜ドラマ『笑うマトリョーシカ』
TBS系にて、毎週金曜22:00〜22:54放送
出演:水川あさみ、玉山鉄二、丸山智己、和田正人、渡辺大、曽田陵介、渡辺いっけい、加藤雅也、筒井真理子、高岡早紀、櫻井翔
原作:早見和真『笑うマトリョーシカ』(文藝春秋)
脚本:いずみ吉紘、神田優
主題歌:由薫「Sunshade」(Polydor Records)
プロデューサー:橋本芙美
演出:岩田和行
編成:杉田彩佳
製作:共同テレビ、TBS
©︎TBS
公式サイト:https://www.tbs.co.jp/waraumatryoshka_tbs/
公式X(旧Twitter):@matryoshka_tbs
公式Instagram:waraumatryoshka_tbs
公式TikTok:@waraumatryoshka_tbs

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