『虎に翼』“結婚”と“家族”を考え直す展開に 誰もいないことにしない吉田恵里香の脚本

 航一(岡田将生)、さらに直明(三山凌輝)の婚約者・玲美(菊池和澄)が同席した猪爪家の家族裁判が閉廷。『虎に翼』(NHK総合)第100話では、結婚しても同居を続けたいと主張する直明と花江(森田望智)の対立は、玲美の意外な一言で解決していく。

 「じゃあ、一度試しちゃだめですか?」と同居について軽々しく言ってのける玲美。同居は直明がプロポーズの際に提示していた“絶対に譲れない条件”だった。軽い感じで人生の決断をしてほしくないという花江だが、寅子(伊藤沙莉)は試してみて駄目であればやめればいいと玲美の意見に賛同。気の強い玲美を前に、航一は花江が考えているような“嫁の苦しみ”は起こらずに、逆に花江が気を遣うことになるのではないかと提言する。場の空気が和んだ隙をついて、直明が花江に謝罪し、わだかまりは解決。家族裁判は閉廷する。

 ご飯の準備をするため、台所に向かった寅子、優未(毎田暖乃)、航一。家族の中で寅子は「トラちゃん」といった愛称や「お姉ちゃん」というような姉弟の間柄で呼ばれているが、道男(和田庵)だけは「寅子」と呼び捨てで呼んでいる。家族裁判の間、航一は道男が寅子を呼ぶたびに、その気持ちがしかめっ面の表情に表れていた。「寅子と呼び捨てにされる度に嫉妬してしまうくらいには、僕はあなたが好きだということ」と優未、そして花江たちが聞いている目の前で断言する航一。さらに、「毎朝、目が覚めた時に、隣に寅子さんが隣にいたら幸せだろうなと思いました」とプロポーズを宣言する。

 航一からのプロポーズに寅子は「嬉しい」と気持ちを伝えつつも、すぐには返事をしなかった。新潟地裁の廊下で思いを確かめ合ったあの日。「永遠の愛を誓う必要なんてないんですから」という航一の言葉と今回のプロポーズがどうしても結び付かなかったのだ。航一は星家で継母・百合(余貴美子)、長男・朋一(井上祐貴)、長女・のどか(尾碕真花)に、寅子へのプロポーズを報告するが、2人の子供たちからはすぐに笑みが消えていく。第20週全体で描かれている星家の不穏な空気、歪な家族関係。妻/母・照子(安田聖愛)を失ったのは、航一だけでなく朋一とのどかも同じ。家族の間を繋ぎ止めていたのは照子だとしたら、子供たちもまた母の死によって心に蓋をしていたとしたら。新潟から帰ってきた父が新たなパートナー、新たな家族との時間の中で幸せそうな笑顔を浮かべていれば、戸惑うのは当然である。プロポーズの先にある結婚、さらに星家との同居は寅子自身にも降りかかってくる課題となるだろう。

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